うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

小早川家の秋(映画)

こばやかわではなく、こはやがわと読みます。変換しても出てこないわ! そう、この家はややこしいのです。いろいろ確認したいことがたくさんあって3回観ました。
2時間弱の映画にいつもの嫁入り要素のほか、代々続く家の継承、大旦那の女遊び、若い娘の外国人デートとパパ活、中小企業の吸収合併話が加わり、とにかく濃くて忙しい。


この映画は小津安二郎監督が東宝で撮影をした映画で(通常は松竹)、念願の小津監督を迎えた東宝の気合が全編に溢れています。原節子司葉子が同じ画面にいるだけでかなり豪華なのに、そこへ新珠三千代が投入されます。ぎゃー! 夢の共演にもほどがある。

さらに司葉子×白川由美のツーショットの美しさがとんでもないことになっていて、このOLトーク(関西弁)で繰り返される「そうか」が「草加」に聞こえる。そのほかにも「こすいこすい」というセリフがかわいらしくて妙に耳に残り、わたしも言いたいのだけど、なかなか使う機会がありません。
大丈夫かと思うくらい表情の硬い宝田明が「愉快やった 嬉しかった」と言うセリフから、当時の育ちの良いヤングのノリが伝わってきたりしておもしろいです。関西弁をたくさん浴びることができます。そして原節子は関東から嫁いできたことがわかる標準語、杉村春子名古屋弁。二人の喋り方も差し色のように効いている。


いつもの小津映画の調子でありながら舞台は関西(京都と大阪)、BGMは他の小津映画が浅草調なのに対し、こちらは渋谷系モンド・ミュージックっぽい!)。
大阪のバーで飲んでいる小金持ちがチャーリー浜っぽく見えてくる(もちろん蝶ネクタイ)のもこれまた楽しく、東京を舞台に描かれるサラリーマン悲哀劇の別バージョンを見せてくれます。
まー、とはいえ、何と言っても最大の見所はここでしょう。

 

 

 浪花千栄子のいやらしさ

 

 

あまりに自然な、日常悪女。うますぎです。
娘とタッグを組む巧妙さや、わかる人だけにわかるように示される着物の胸元の緩み。登場シーンからいきなり「その歳でそれ言う?」と畳ごとひっくり返されるようなセリフ(うちが初めて女にしてもろうた日、とか言うの!)を放ち、そして「麦茶にお砂糖入れるんでしたっけ」と馴れ馴れしくするときの、あのステップ!!!
やっていることは全部ふてぶてしいのに、この人がやるとアリになる。いやぁ、びっくりした。
彼女の発言には名言が多く、この教えだけは脳内へ音で刻んでしまっておきたい、と思うものがありました。

 

 

 言い方ひとつや

 

 

パパにうまく欲しいものを買わせることができずにいる娘に、しれっと伝授する。
この映画はチーム清純(原節子×司葉子)とチーム割り切り(浪花千栄子×団令子)、それぞれの世界で思想が引き継がれていくのですが、原節子に言わせている名言よりも浪花千栄子に言わせている名言のほうが実用的で刺さりました。

お茶漬けの味」に三宅邦子の息子役で出ていた男の子の関西弁演技も自然で、中村鴈治郎の歩き方も挙動もドリフみたいでおもしろい!
こんなふうに終盤直前までさんざん動いて笑わせておいて、最後に棒立ちショットが続いて、その変化にはっとする。
とんでもない映画でした。

 

小早川家の秋

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  • 発売日: 2013/12/20
  • メディア: Prime Video
 
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