うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

狂人日記 / 狂女 / ある自殺者の手記 / 墓  ギ・ド・モーパッサン著 秋田滋(訳)

友人がモーパッサンの短編を読んだというので、わたしも久しぶりに4つ、お風呂タイムに読みました。
4年前にたまたまタイトルが気になって読んだ「脂肪のかたまり」に衝撃を受けて以来モーパッサンが好きで、その後もいくつか短編を読んだ時期がありました。

 

今回読んだものはどれもすぐに読み終わる短さで、タイトルはみごとに絶望的なものばかり。でもやっぱりいい。タゴールのように、人間がなぜか選択する道のありようを書いているから。(タゴールの「唖娘スバー」を読んだときに、モーパッサンと似た印象を受けました)


どの物語も、人がなんでそんなことをするかなんて、あなたにわかるように説明する必要があるかといったらたぶんないけれど書きました、というよう突き放しかたがいい。人間の選択に実は深い意味なんてない現実を書こうとする視点が、ちょっと独特なんですよね。
それぞれの感想を書きます。

 

狂人日記

ある個人の日記の形式で書かれた、書いたらネタバレになる話。
教師のわいせつ罪とか宗教者の自殺とか、そういうことって矛盾だろうか。と考えたことがある人なら怒らずに読めるかと。

狂人日記

狂人日記

 

狂女

絶望しながら生きることが狂っているとされるなら、どうやって生きたらよいのだろう。そんなことを考えました。

狂女

狂女

 

ある自殺者の手記

わたしもこんなふうに、思ったりするだろうか。そんなことが自分にもあるような気がすると思ったけれど、以下の箇所を読んで自分は違うと思いました。

  私にはもう自分がむかし好んで会った人々の側にいることさえ出来なくなった。

わたしこの本を、友人がおもしろかったと言っていたから読んだのでした。

ある自殺者の手記

ある自殺者の手記

 

 

ありそうでなさそうな話なんだけど、モーパッサンの小説は「熱弁」に力を感じます。
話なんてどうでもよくて、こういう熱量の瞬間って人生にはある。スピーチライターのようなうまさ。
いま思うと恥ずかしいのだけどわたしはあれに夢中だったという経験は、複雑な感情を呼び起こします。その複雑さの最大公約数みたいなのを拾い出すのが見事。 

墓

 

モーパッサンは短い文字数でもグイッといきなりその世界へ連れて行ってくれます。

この強引さは癖になる。エスコートがうまい。きっと魅力的な人だったんだろうな。