うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

お早よう(Good Morning / 映画)

大人の世界と子供の世界を描いたおもしろい映画でした。
定年退職する人が就職活動をしています。その人が「30年勤めて放り出される」と言っていて、どうも計算が合わないなと思ったら、この時代は(映画は1959年)定年の年齢が55歳だったんですね。ちなみにこの転職活動をしているのは、初代水戸黄門の人(時代!)。

 

テレビや洗濯機を持つ家がぽつぽつ出始め、中年男性たちが飲み屋でテレビについて話し「一億総白痴化」というフレーズが出てくるあたりなどは、子供が Youtuber になりたいと言うんだけど・・・なんて話をしている現代のよう。


お母さんがまだ着物を着て、あそこのお家は○○機を買ったそうですね……うちはとてもとても(買えない)なんて話をしています。生活家電のパンフレットを見て夫婦で検討して営業さんに注文して買う流れも懐かしい。時代は違うけれど、自分が子供の頃に新聞の折り込みチラシを見てワクワクした記憶が解凍されました。
何日も何ヶ月も悩んでモノを買うのって、楽しかったんだよな。そして家にそのモノがやってきたときの、キャーッと飛び上がるような感じも。

「購入」のプロセスを見て胸がキュンとする映画って、なかなかない。

 

 

そう。この映画には、長年忘れていた生活のときめきがギュッと濃縮されています。サザエさんのスポンサーは家電の会社だもんね。そうだよなぁ。そうなのよ。うんうん。
家に日用品の押し売りがやってくるのも懐かしい感じ! しかもこの映画はコメディだから、押し売りとその対抗グッズを売る人が商売仲間で、何から何までうまくできています。


生活圏に外国語が入ってきて、大人がなかなか言えない意思も子供は「アイラブユー」「サンキュー」と口にし、若者は自分の失業状態を「ルンペン」と自虐する。
中年は中年で、ボケてきた親に「楢山だよ」(姥捨山に捨てるぞ、の意味)と言ったり、子供に「死んじゃったっていい」とカラッと言ったりして、どれもいまじゃ絶対絶対絶対NGなセリフだけど、受け手が深刻じゃないからコミカルに響く。BGMも始終スッテンコロリン調。
しかもその曲調からサスペンスへ転調して、主婦同士のいざこざ場面に移ったりする。主婦世界の人間関係の苦しさは「桐島、部活やめるってよ」(映画)とも似ていて、悩みや喜びの題材は普遍的なものばかり。

 


子供たちが「行ってまいります」と出かけるときはすごく丁寧語なのに、「おはよう」「ありがとう」には「ございます」がつかず、いま見るとなんだかヘンな感じ。当時の子供の言葉も印象に残ります。
そして子供が大人を尊敬する理由が「あのおじさんは、いい音のオナラを出す。さすがガス会社で働いているだけのことはある」というロジックが最高!!! そのグル(師)から本気で放屁技術を習得しようとする真剣さもいい。
いいオナラを出すために食事にこだわったり、食べてはいけないものを食べたり、とにかく信仰心が純粋。わたしにもユリ・ゲラーを信じたピュアな子供時代があったことを思い出しました。(ユリ・ゲラーがわからないヤングはググってついておいで!!!)

 

はあ。それにしても、なんという楽しさ。心がニヤニヤしてる。こんな気分になる映画はなかなかありません。
わたしは『小早川家の秋』を先に見ていたので、小早川正夫ちゃんの「バン、ババン、バーン」が林勇ちゃんの成長版セルフカバーであることを知った時には、たまらん気持ちになりました。当時公開順にリアルタイムで観ていたら、きっと観客みんなが勇ちゃんの親のような気持ちだったに違いない。そんなことを想像しました。

 

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