毎晩お風呂で読んでいたのですが、続きが気になって入浴時間が楽しみになりました。
読み終えてみるとなんとも鮮やかで爽やか。人はたくさん死んでいるのだけど、問題はそこじゃないと思わせる独特の時間経過を体験させる。
あー、そこ、そこかぁ……。と読み終えた時に思うのだけど「そこ」に自分がいた時にはどんどん意識が「先」を追っていて、なんか騙されたけれど嬉しい。意識の追いかけっこのゲーム。
すこーんと騙されるのって、なんか気持ちいい!
この快楽にわたしは気づいてしまいました。まるで強度の高い運動の後のよう。
わたしが読んできたミステリーって、だいたい「犯人はどういう種類の性癖か」を探っていくようなものばっかりで、というかほぼ江戸川乱歩だったから、じめ〜っと、どよ〜んと騙されてきた。
その点アガサクリスティは、爽やか! 書いてても楽しいんだろうなぁ。登場人物たちの上品さとプライドが絶妙で、その人々を運んでいくスピード感も、爆走じゃないのがいい。
あなたじゅうぶん、気づく余地ありましたよね? と言われたら「はい……」と言うしかない速度なんだけど、でも確実に煽ってきてたよねと、心の中で何度も抗いたい。
気持ちよかった。
- 作者:アガサ・クリスティー,青木 久惠
- 発売日: 2012/08/01
- メディア: Kindle版