短編集を読みました。なんだか、このかたはペンネームの業を過剰に背負いすぎのような気がするなぁと思いながら読みました。
「綿」よりも「矢りさ」がもっと読みたい! 「こたつのUFO」というSFコントを読んで、しみじみそう思いました。もうここまでおもしろかった小説にしなくていいような…というくらい。教訓めいたクロージングになっているけれど、途中が爆発的におもしろい。「かわいそうだね?」のときみたいに、爆笑の嵐で囚われから連れ出してもらえた!
「意識のリボン」という物語は死生観を取り扱っていて、それをポップにひらがなで読ませてしまう「ひらがなテクニック」のリズムは独特。
いつもながら、自分にもある性格の一部の、できれば決別したい性質がありありと書かれているのに、笑えるのがいい。自分では行動しないのに安全な場所で人間観察をしてそれでは足らずに寸評までする、まずお声がけリストから外したくなる女性のメンタルの描きかたの抑制は、よくここまで書いてここで抑えておけるものだと思う。ちょっとリスクヘッジしすぎにも見える。
わたしはコントっぽいほうのやつを読みたい! 読みたいもっとちょーだーい! という気分になる。
「こたつのUFO」の、宇宙人に地球人を説明するくだりなどは、ああもう大好きだ…ええもう終わっちゃうの? となりました。大人になると心を暴走させることができないから、じょうずな人が書いてくれたものを読むのがよいのです。
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