うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

インストール 綿矢りさ 著


デビュー作だそうですが、いきなり、かなり、おもしろい。設定のちょっとだけ強引な感じが、ほどよく非現実に連れて行ってくれる。
ここで描かれる感覚は、あまりにもリアル。主人公は高校生の女の子。そしてこの小説を書いていたのも高校生の女の子だっただというのだから、なんたる事態。
ひときわ印象に残ったのは、以下の人物・社会描写。

高倉健のようなプラスの不器用さではなく、この青木さんのような、相手の人間を思わずのけぞらせてしまう程の異様な一途さぶっつけてくるマイナスの器用さを持った人は、実際迷惑だ。



ドラえもんに出てくる出来杉くんみたいな子から風俗嬢なんつう言葉が聞けて、IT社会、世も末だなあと思った。



私自身だって、そりゃもう年齢も名前も嘘だらけ、インターネット上の匿名性を思う存分利用させてもらってここにいるので生意気なことは言えないが、"いつもは忙しいビジネスマン" と名乗る男があまりにも多いのには呆れる。

この物語に出てくるブラウザが「ネットスケープナビゲーター」で、すごく時代を感じるのだけど、主人公が交流する人に対して感じていることはいまでもほんとうにその通りで、するどい。
小説は2001年発表。あれから15年経った今でも、リアルにIT社会どっぷりの環境で仕事をしているわたしは "いつもは忙しいビジネスマン" と名乗る男があまりにも多いのに呆れてる。出来杉くんみたいな子が大人になったオッサンがストリップに行かずに動画を消費しているのを知っている。そして、思わずのけぞる異様な一途さをぶつけられて、のけぞりを通り越してブリッジまでしそうなことがある。こんなにも高校生の頃の綿矢先生の言うとおりでいいのか!

この小説は口語のリズムが整いすぎていなくて、ほんとうにそのへんの子が話しているのをマクドナルドで耳にしたような感じなのがいい。芥川賞受賞前の作品ですが、めちゃくちゃおもしろいです。


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