あっという間に読み終えてしまった短編。読みながら想起したのは、痴漢の冤罪。
こんな動作をしたらあやしまれると思って、べつに悪いことなどしていないのに考えを回しすぎてさらに動作が怪しくなって…
そんな動作を、自分のことを好意的に見ない人が見れば、こんな展開もある。運が悪いだなんて、当人にしてみればそんなひとことでは済まされないのだ!
まっさん(というのは、さだまさしさんのこと)の「無縁坂」という歌はメロディで思わずもっていかれちゃうのだけど、親の運のなさを「あなたを見てて、そう思う」って、いうか〜? 息子が…。という歌でもある。
「あなたを見てて そう思う」だなんて、他人でも身内でも、思ったってそうそう口にできない。この物語を読んで、そんなふうに感じた。
言えないからこその歌詞であり、小説であり、そういうことだ。
ひとつ、文字列としてこれはすごく感じが出ている! という部分があった。家禽というのは家畜の鶏のこと。
家禽は両脚を縛られたまま、赤い鶏冠をかしげて目をぎョろぎョろさしている。
ニワトリの目って、白目が大きくて忙しくってまんまるで、たしかにぎョろぎョろしてる!
わたしはここが妙に気に入ってしまって、ぎョろぎョろ、ぎョろぎョろ… と、何度も口に出したい気持ちになりました。
▼青空文庫で読めます