うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

ヨガの練習をコンテンツとして消費するかのような市場向けのサービスが、少し前まであった

今日書くことは、昨年書いた「ヨガ教室やヨガ・ワークショップを探せるポータルサイト」の終盤で触れた話題のその後のことです。
当時リストした3サービスはすべてなくなったのですが、グリー株式会社の子会社が運営していた「レスパス」が3月末に終了し、5ヶ月が過ぎました。
このサービスが展開され始めた頃、ヨガやワークアウトの教室・スタジオ運営に携わる人から、複数の角度で「これって、どういうことなの?」というような質問を受けたり、自分が生徒として練習をしに行く場で変化を見たりしていました。いっぽう、わたしはこういうサービスを考えてスタートする企業の雰囲気も少し想像できる。みっつのわたしが、「こういう時代になっちゃったか〜」という感じで見ていました。
もう終了したサービスなのですが、ものすごく端的に要約すると、



 あなたの学校のクラスの、空席があって余らせている、そのスペース
 埋めたいよね? それ、在庫でしょ?
 スマホアプリで送客してあげるから、対価をください。
 広告宣伝費と考えたら、安いですよ。しかも成果報酬ベースだし。


わかりやすくするために少しいやな口調の書きかたにしましたが、IT企業がさまざまなフィットネス・チェーンから小さなスタジオまで巻き込むことで成立した、そういうサービスです。
利用者(ボディメンテナンスをしたい人)はさまざまなクラスを単品ごとに月定額で消費できますが、在庫の範囲内に限られます。
同じクラスは○回までなどの制限もあります。ざっくりいうと、このような形。



わたしが気になっていたのは「在庫」という考えかたです。人のやる気をモノ化すると、そういう発想になるということ。
練習者とのエンゲージメントの高いスタジオでは、人のやる気をモノ化して扱うことで、雰囲気をかき乱される感じになります。まぁでもそのくらいは想定内。体験レッスンのキャンペーンをジャブジャブ打てば似たようなことは起こるし、ある意味慣れた景色になってしまっているところもある。
今回想定を越えていたのは、お試し感覚でコンスタントに来る人を抱える可能性がある、という部分。ラクティカルなことを「消費する」という感覚の人が混じることによるセンシティブな問題については、多くの人が言語化できないところかと思います。
そこを踏まえてトータルで、どうか。ここは経営判断の優先順位次第。


わたしの感じたいちばんつらい側面は



 サービス業が苦手な講師ほど辞めていくだろう



ということ。本編以外の部分で求められることが増えれば、辞めたくなるのは当然の流れ。
わたし自身がヨガ講師の時にそういう性質を濃く持っているので、グリーのそういう新規サービスのノリに対して「きっつい黒船きたなー」と思いつつ、IT系OLのわたしが「ヨガのうちこちゃんが、かわいそう…」と別のわたしを心配するような、まぁそんなふうに一人二役マインドで悶々としておりました。


便利なサービスは時として、土足でズカズカいく感じがある。
とくにウェブサービスは「埋めたいよね? それ、在庫よね?」というドライさがないと win-win な仕組みは成立しにくいのだけど、win-win以前に読めていないところが、あったと思うのです。
利用者にとっては便利だったかもしれないけれど、「余りモノだけ自由に食べていいですよ」という仕組みに長く熱狂できるかといったら、それもまた微妙なところ。お試しから本気へのストーリーがデザインされていない。
全方位的に敬意がありつつナイスな落としどころって、そう簡単には見つからないものです。そのレベルのインパクトでは予算も下りないしね…。
世知辛いわー。