うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

今夜もカネで解決だ ジェーン・スー 著


そうなんだよなぁ昔は23時でも入れて終電で帰れるのは鳥来(ウーライ)くらいしかなかったよ! とか、「あ、これあそこだ」というのがわかる店もあって、マッサージのレポートとしてはまるで同僚の話を聞いているかのような内容。わたしもけっこう都会のマッサージへ行っていたんだな…。
前後編で書かれている六本木の店はロアビルのあそこではないか。店舗名は書いていないけど、読めば「そうなのよぅ…」とうなずく説明。なつかしくなりました。かつて終電で家に帰るのがめんどうなときに、わたしも4000円でホテル代わりに使っていたっけ。

ジェーン・スーさんも同意書とかなくいきなり「ハイ寝て」って勢いでわーっとやってくださるチャイナ系が大好きらしく、わかる! と何度もうなずきながら読みました。
とくにここ。

無愛想でも大雑把でも、効果が感じられるだけでなくちょっとした気遣いがマニュアルチックでなく優しいんですよね、アジア系の施術者さんたちは。
(痛みと笑いの先に、首長小顔が待っている。 より)

わたしは料理店でも同じようことを感じます。「すいませーん」と呼んで「なに?(=なに食べたいの?)」といわれると妙に癒やされる。


昨今さまざま変化している保険適用などは気にしたことがなかったので、なんだかそのあたりの社会システムの勉強にもなりました。ジェーン・スーさんの語りは、ラジオを聞いていてもそうだけど、社会背景をじょうずに分解してくださる。おもしろいうえに、ためになる。
マッサージ店でしか起こらないトンデモな展開も、あるよなぁこういうこと…とは思うものの、言葉にするのはむずかしい。あとで背中が真っ赤になる施術を受けて、そこで「アイアム因幡のしろうさぎ」なんて喩えはなかなかスッと出てこないもの。おもしろい! わたしはここで鼻息が塊になってしまい、コーヒーをこぼしそうになりました。

マッサージ店のウェブサイトが変わると、わたしも「SEOのコンサルが入ったな…」「あの予約管理アプリを入れているな…」とかつい見ちゃったりするのですが、「この時間帯でこういう告知でこういう状況は、地元の人に支持されて予約がたくさん入っている証拠」というような状況の読みかたは、プロモーション視点がある人ならでは。このあたりも、すごくおもしろいです。


ジェーン・スーさんのなかでは自分で運動をしようという方向へいく人は賢者ということになっているのですが、わたしも以前はかなりあちこちへ駆け込んでいたので、運動をするようになってもそれはそれ。マッサージも運動もここで書かれているようなマインドで向き合えば、自我を手放せる時間を得られるか否かという遊戯です。
ヒーリングというワードに眉をひそめつつも効果を感じたり、チネイザンまでトライしていたり、スピリチュアル系のヨガを好む人が好きそうなメニューも出てきます。
終盤にあった、驚く内容の文章の書かれている同意書の話は、何度も文章を読み返してしまいました。プロ意識とはまた別の次元にある、人間の良心を信じていない人が人間を癒やすことなどできんわな、という話。


この本はセラピストの友人が「バイブルになりそう」といってすすめてくれて読んだのですが、そっち方面のかた、必読です。こんなに利用者の本音が多角的かつ分析が的確なユーザーレポートは、なかなかお目にかかれるものではありません。



(▼2020年に追記)文庫になってる!



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