同僚が貸してくれました。あまり小説は読まないので、たまにお友だちに借りるのがよい息抜きになります。
いつかこの本を貸してくれた同僚と一緒にお昼ごはんを食べていたとき、「うちこがよしもとばななを初めて読んだのは、母が読んでいた"キッチン"と"つぐみ"を面白いよって言って貸してもらったんだけど、親がこんなのを読んでいるのかぁって、同じものに共感していることに驚いた」と話したら「まったく同じ!」と。
久しぶりに読みたい気分になったら、翌日デスクにこれが置いてありました。すごく夏にぴったりのお話。まーなにがすごいって、この短い一文でよく表現するよなぁ、という感情の切り取り方。切り取るというよりも、「掘り取る」感じで、奥行きがあるからみんなグッと来ちゃうのだと思います。耳かきされているようなね。
今回は、グッと来ちゃった三本勝負。
<24ページより>
愛のない使われ方をしたお金の流れは、町の人たちがちょこっと考えたいろんなかわいい工夫や、小さく大切にしてきたことをどっと流してしまった。あとにはみじめな感じだけが残ったみたいだ。
<37ページより>
(主人公の母の言葉)「まりちゃん、この町のいいところをたくさん案内してあげなさい。心細いことのない夏にしてあげなさい。」
<91ページより>
夕陽はすごい力を持っている。今日が一日しかないことを、沈黙のうちにさとらせる。
思わず膝をたたいちゃうような感じではなくて、心のひだをくすぐられる気持ちよさ、せつなさが癖になっちゃうんですよね。ひらがなの多さも、本当はちょっと少女っぽくて嫌なんだけど、でも「ここはひらがななんだな。」って納得しちゃう。
今回は、「人を迎え入れる思いやり」ということの本質が「心細いことがないようにする」ことであることを学びました。なかなか上手にできないなぁ。
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