うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

図説 インド神秘事典 伊藤武 著

「民族」「住居」「料理」「装い」「性愛」「武術」「芸術」「占星術」「世界観」「哲学」「ヨーガ」「医学」の12章構成で盛りだくさん。542ページにわたり、辞書くらいの厚さですが夢中になって読んでしまいました。
特に面白かったのは「性愛」「武術」「哲学」「ヨーガ」「医学」の章。日々の生活で感じる真理に触れる内容がたくさんありました。なかでも印象に残った4つを抜粋。

<202ページ「性愛」の章から>
(中略)結婚式で初めて配偶者の顔を見た、というカップルも少なくない。そんなとき「カーマ・スートラ」の「処女との交渉」の巻は、若いカップルが信頼関係を築きあげることにおおいに貢献している。ヴァーツィ先生は言っている。

いまだにお見合い結婚が多いインド。まるで経典のように教えていることに感慨深いものが。

<438ページ「哲学」の章から>
「ダニャワード」
ありがとう、の意味だとガイドブックにはかならず載っているけど、インドに行くなら、インド人には使わないほうが無難なのがこのヒンディー語だ。梵語にただせば、賞賛の言葉、の意だが
  あっぱれ、あっぱれ、予はそちの善き行為をほめてつかわすぞよ
のニュアンス。ほんらいは、バラモンが身分の低い者にいう言葉なのだ。

使ってしまっていました。なんだかこの言葉、むかし殿様が家来に使った表現に近い「ご苦労様」に似ています。個人的に、「ご苦労様」の使用シーンには敏感なので、「おっ」と思いました。

<503ページ「医学」の章から>
人間はもともと悟っている清浄な状態にあったのだけど、カルマで汚れて<苦しみという病気>になってしまったのだから、カルマを浄化したら元に戻る、という考え方だ。「ヨーガ・スートラ」にも、
「人間はもともとプルシャ、つまり宇宙的全体な存在なのだけれども、こころがうじゃうじゃ考えるから、それに気がつかない。だから瞑想してうじゃうじゃした思いを取り去ったら、元のプルシャに立ち戻って悟りが開ける」みたいなことが書かれている。

ヨガをはじめてから、よけいなことをうじゃうじゃ考えなくなった。ほんとだよなぁ、と素直に共感。

<535ページ「医学」の章から>
カーストには、職能制度という一面がある。ヒンドゥーでは、結婚はほとんど同じカーストに限られ、しかも同職の者どうしがほとんどだから、職能遺伝子が固定されてしまって、それが純粋培養されるのだ。何十代にもおよぶ技術の蓄えもある。
彫刻家カーストや絵描きカーストの工房を訪ねたことがあるが、技術面に関しては、10歳くらいの子どもでも完璧だ。バラモンなどは、ちょっとした百科事典の内容でも平気で丸暗記してしまうほどの記憶力がある。

情報がたくさんあふれていても、やっぱり環境とセットで与えられた専門知識って半端ではないはず。なるほどなぁ、と思いました。


引用が多く長くなってしまったけれど、これらはほんの一部。読んでよかった。よい本です。

★おまけ:伊藤武さんの「本棚リンク集」を作りました。いまのあなたにグッとくる一冊を見つけてください。