うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

モダンヨーガバイブル クリスティーナ・ブラウン著/加野敬子(翻訳)

先日、書店で右の新しい「モダンヨーガバイブル」(書かれたのは2017年)を見つけて、さっそく手にしました。

続編が出ていたなんて、知りませんでした。

 

わたしはすでに左の「ヨーガ・バイブル」を持っていて、本の感想をブログに書いたのは17年前のことでした。

動物の名前のポーズがいっぱいの、楽しいヨーガの本です。

 

 

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わたしはここ10年くらいで、ヨガがやさしく、同時に小難しくもなったなと思うことがあります。説明に平等を意識しすぎた少し過剰な波が来ているというのかな・・・。その背景となる、西洋から拡がる平等意識を認識するのに、この本が役に立ちました。

 

ここ数年(コロナ以降)、わたしは自分の練習のために3つの場所に定期的に通っていますが、最も日常的に通っているヨガスタジオはまさにこの「モダンヨーガバイブル」のような内容が多く、ピラティスのクラスもあります。

 

わたし個人の話をすると、わたしは古典でもモダンヨーガでもない、ちょっと前のモダンヨーガが好きです。上の写真でいうと、左の青い本の時代のヨーガ。

過去にこんなことも書いたことがあります。

 

仕事や日常生活の面で、わたしは運動感覚に発見が起こる練習に救われることが多いんです。ここの接続にこだわっていたけど、この順番でいくと、なるほどそうなんだな。と思うような。

慣れたツールを進化にあわせて手放さなければならないことに対して、ヨガの練習そのものが慰めになったり引導を渡す役をしてくれます。

「同じことでも続けていくためにはこうやって調整しなければいけないんだな」と思うことで切り替えられたり、「ベースはずっと変わらないものがあって、それが続いている」と思うことで慰めらたり。

 

わたしはIT業界で仕事をしています。メタバースだChatGPTだと新たな技術がどんどん押し寄せ、「これからはこの仕組みで行くことになったので、今月中に移行してください」「来月までにこのオンライン資格を取得してください」という TO DO が降りてくる生活のなかで、理解や納得のための時間稼ぎ中の精神安定剤として、ヨガがずっと助けになっています。

 

 

同時に、ヨガ的な生活様式や考え方を衣食住の基本生活に盛り込むことで普遍的な自然と結びつき、人間らしい気持ちも満たされていきます。

ハタ・ヨーガの奥にある思想自体が、いまの時代を生きていく上で、キャッチボールの練習で的にする「壁」のような存在を果たしてくれていると感じています。

 

 

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今日ここで紹介する「モダンヨーガバイブル」は6年前に出版された本で、多くの人がスマホを使うようになった現代に、すべての人に快適なヨガを提案しています。

普遍的なところがテキストに落とし込まれているので、わたしのように運動量の多いヨガをする人にも、根本的な部分で心身がどこに喜びや学びを感じているか、文章で思い出させてくれます。

 

ねじりのポーズ群の冒頭扉にある文章のなかに、「よくそこに触れてくれた!」と思うフレーズがありました。

気が重い、疲弊している、あるいは心がうつろなときにも、ねじりのポーズによって気持ちが持ち上がり、新鮮な気持ちで明るくなり、エネルギーが感じられます。午後になって気分が沈んだときには、癒しの効果のあるねじりのポーズを行ってみてください。

(効果の大きいツイスト より)

ここを読んだ時に、わたしがここ数年「日没問題」と名付けているものを想起しました。

朝は精神をポジティブな状態にもっていきやすい時間帯。この時間帯にヨガをすると相乗効果を感じます。が!!!  ごくごく日常にある手近な問題は「夕方以降をどう過ごすか」です。

わたしの場合、ヨガをはじめた頃に絶妙な流れで日常にハマった背景として、この午後の問題があった気がして。

自粛生活を機に日照時間の移り変わりや日光の強弱を感じる生活をして、やっとその詳細に気がつきました。

それまではヨガの効果を "その日の余剰エネルギーの発散によるスッキリ感" と思っていたのですが、それだけではなかった。午後のマインドのエネルギー・チャージになっていたんじゃないか。だからよく眠れるのではないか。

そんなふうに振り返っています。

 

 

この本はストレスへの対応やリラクゼーションに多く説明が割かれ、ヨーガの深い意味の部分を踏まえつつ、上手いなと思うコピーワークが随所に見られます。

ストレスの説明のページのキャッチタイトルは「再びつながるために、切り離す」

説明も短い文字数で完結です。

 ストレスとは、常にスイッチの入った状態であり、その状態からスイッチを切って沈思する方法がわからない状態を言います。

(再びつながるために、切り離す より)

ヨガニードラのガイドを一語一句検証するように聞くことは「外部へ向けた思考」なので、「スイッチを切って沈思する」こととは逆の行為。

スイッチはオフしながら爆睡(熟眠)しないところに、ヨガニードラの瞑想の練習としての利点があると感じます。

 

 

終盤で展開されている「現代生活のための古代の英知」というコラムでは、ヨーガ・スートラの第2章15節と第2章17節が取り上げられていました。

数ある節の中からこの2つに絞り、日常に近いところにある心の問題が書かれています。

ムスカーラの説明もすばらしく、こんな文章でした。

苦は、今ここにある現在の経験とそれまでの経験(あるいは、現在の経験は「こうあるべき」という考え)とが合致しない時に、生じます。つまり、自分自身を含めたすべてのことは変化し、この変化は常に起こっているのだということを受け入れられないために、苦が生じます。

(リラクゼーションを楽しむ/現代生活のための古代の英知 より)

わたしはヨガ哲学の先生から internal conflict という言いかたで教わったトピックがあって、よく思い出します。

 

 

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さて。(まだ続きます。長いよね)

 

 ↑

この本ではポーズを行うモデルに中南米、アフリカ、アジア系の人が多く入っていて、それは表紙を見ての通り。ものすごく ”平等” を意識した作りです。

わたしはヨガ自体がそもそもインドから世界へ広がった誰にでも行えるもので、平等を実現したものと思っているので、ここでモデルの多様性を押し出されると不思議な感じがします。

白人社会の人ほどそれを意識しなければいけないのは、それはそれで奇妙な感じ。

この本のストレスの解説の章にあった「西洋の怠惰と東洋の怠惰」の話はとても興味深いもので、ここを読む限り日本の人の感覚は西洋に属すのでは? と思うのだけど、日本はたぶん東洋ですよね(ああややこしい w)。

 

 

安全・安心・平等が基本中の基本です!!! とエクスキューズしすぎて、なんだかいろいろ複雑にしてない? というのが、この本や最近のヨガの説明に対するわたしの正直な感想です。

怠惰について話すときには、前提も含めた細かな語りが必要になるし、ヨガの哲学を学ぶ延長線上でバガヴァッド・ギーターが登場するのは、ここに触れるためでもある。わたしはそのように理解してきました。

なのでここで「西洋の怠惰と東洋の怠惰」の話がチラッと出てくるのが新鮮で。(ほんとに、チラッとしか出てこないのだけど)

 

 

それはそれとして説明は完結で秀逸で、光のようなフレーズがいっぱいです。

わたしはこの本の序盤の「ヨーガはなぜあなたを、こんなに気分よくしてくれるのでしょう」にある、以下の語りに首をブンブン振りました(痛めない程度に)。

慣れ親しんだポーズに初めてのように取り組むのを、「初心者の心」と呼んでいます。初心者の新鮮な気持ちで取り組むことで、よりフロー状態へ入りやすくなります。無感動で退屈な気持ちでは、フローを経験することはありません。

 

体は、ドーパミンとエンドルフィンという気分をよくする化学物質を出します。音楽を聞く、愛を育む、ヨーガ以外のエクササイズをするなど、これらの化学物質を出す行為は他にもいろいろありますが、ハタヨーガの練習には神聖な化学物質が存在します。ヨーガの練習ではマインドフルネス、深い呼吸、そして動きが結びついてこれらの化学物質の放出を引き起こし、前向きな脳の再編成が促され、変化が生じるのです。

 

いろいろやったけど、結局ヨガがなぜか好きなのよね・・・という人がこの本を読むと「ほんとそれ!」と思う表現が沁みるはず。

 

この本にあるポーズの説明自体は、マンツーマンあるいは少人数でヨガのポーズを見てもらうレベルのことが書かれていて、初心者がひとりで家でやるにはけっこう突っ込んだ内容だと思います。

 

 

(本編おしまい)

 

 

 

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<わたしからのお知らせ>

ヨガのことを書くのは久しぶりになりましたが、「わたしはここにいますよ、このブログをご覧になったかたは、どうぞおいでください。一緒にヨガを楽しみましょう♪」というヨガの場があります。

わたしは日曜に東京の銀座で活動しています。

準備運動&アーサナの後にヨガニードラと瞑想まで行うヨガクラスです。(以前高田馬場で行なっていたようなハタ・ヨーガのクラスにくつろぎと瞑想の時間を加えた構成です)

 

初めましてのかたもお久しぶりのかたも、以下のページから日付や内容をご確認いただきつつ、どうぞ気負わずおいでください。

 

会場に道具があるので、ヨガニードラの前には以下のような回復のポーズを入れています。ヨガでハートをふっくらさせたくなるときって、ありませんか。