一年ぶりに関西で読書会を開催してきました。
今回の課題図書は二度映画化もされている、『沈黙』。
この日はひとつ、新らしい現代用語を覚えました。
シゴデキ
仕事ができる人のことを「シゴデキ」と略すらしいですね。
ある会話の中で教えてもらいました。
<この小説を読んでみようと思っていたかたは、
読み終えてからもう一度このページにおいでください。
きっとそのほうが楽しいはずです>
「通辞」がシゴデキすぎて、AIがその思想を掴めない
今回は情報の整理・要約をChatGPTに任せて進行用の配布テキストを作成しました。
この日の議題に合わせて主要な人物の思想を要約してもらったのですが、「通辞」については AI が手をこまねいている。パッとしない回答を返して来ました。
そんなこんなの経緯を話しながら、「この人、なにげにキーマンですよね」と話したら、「シゴデキですよね」という答えが返って来たのでした。
そう。仕事ができるって、日本ではこういうこと。
最終面接の達人「イノウエ」
いくつも問いが参加者の方からあがってくる中に、こんな具体的な問いがありました。
対象者は二人。ガルペとロドリゴがいた。
なんでイノウエはロドリゴを選んだのか。
イノウエは話術に長けた、デキる採用担当者。
その話術に圧倒されてしまって「二択で選んだ」という視点がわたしにはありませんでした。
イノウエは職務の意義「キリスト教の弱点をあらゆる角度からつかむ」という面において深い視点を持っており、ピュアな宣教師から傲慢な宣教師まで見てきた経験があります。
最初のうちは珍しがられてwin-win であった布教時代と、来てみたらこんなはずじゃなかったと思うようになる弾圧の時代。その流れと聖職者の心情を実地で見て、そこからさらに、”他人の土地にまでやって来て布教することを正義とする人間の思考” を緻密に研究しようとしています。
「エゴが強い」「業が深い」などの解釈のフレーズ
わたしはイノウエがロドリゴとガルペを比較して見ているという視点がなかったので、「なぜロドリゴ」というのが新鮮な問いでした。
そして、こういうときに、つい「エゴが強い」「業が深い」などのそれらしい言葉を使いたくなります。
頭の中で常に自分と周囲の人をジャッジして、自分の希望が壊れないように物語を脚色しようとする、その思考が書かれているのはロドリゴだけ。
だからガルペとは比較のしようがないのだけど、イノウエはロドリゴのほうが自分都合で状況を曲げて解釈しようとする力(ずるさ)、先輩の宣教師へのあこがれが強いと見たのではないか。
だとしたら、どんな瞬間にそれを見たのか。
むしろこれは通辞の能力では?
イノウエまで情報をエスカレーションするのは、役人や通辞の仕事です。
最終面接をしているのはイノウエだけど、その手前の分析の時点で多くの情報を持っているのは・・・
この小説の中で「唸るようなプロの話術」はイノウエの会話の中にあるけれど、「絶妙なタイミングで針の穴に糸を通すような揺さぶり」は通辞から仕掛けられています。
通辞はボスの仕事のやり方とその心を理解して立ち回っています。
同時に、ロドリゴのボスであった人物・フェレイラの言葉と思想も理解しているキーマンなんですよね・・・。
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読書会では、ネット上のテキストを解析するAIが要約できないところを掘って話すことができました。