うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

「見て見て〜」のあとが、「すごいね〜」ではない国で


お盆前後はいろいろなひとが帰国・帰省されますね。
わたしは先日、フランスから帰国中の友人と久しぶりにたっぷり話す機会がありました。たまにオンラインチャットで話していたのでそんな感じがしなかったけど、会うのは9年ぶり。知り合ってからは15年くらいになります。
以前は会社で机を並べて仕事をしていたわたしたちも、いまはお互い全く違う方向へ進み、離れてからの年月のほうが長くなりました。もはや同窓会的な懐かしさというより、大人になってからまったく違う価値観の場所へ身投げした「同士」のような感じです。



彼女は自身の感じる「人恋しい」という感情にまっすぐ向き合えるので、かつて価値観を共有した職場の仲間と交流を保ちながら生活を移行することができたようです。
わたしはインドで勉強をしたあと価値観の混乱からデフラグにかなり時間を要し、対人面ではいまでも「ひとり道場生活」のようなスタンスから移行できずにいるのですが、彼女いわく「環境に流されてしまって、かえって遮断できない人のほうが多いのでは」とのことでした。彼女はサッカー好きの人なので「日本に居ながらそれをやるなんて、長谷部なみのコントロール」と表現していましたが、よくわかりませんでした。どうやら長谷部選手はプラティーヤーハーラがすごいようです。アーサナをする人には長友選手のほうが身近に感じるところですが、なるほどそこは長谷部選手なのですね(「心を整える」という本を出されているのをあとで知りました)。


この日は積もる話がマウンテンでした。
わたしはここ1か月くらい、モリエールにハマっています。モリエール、わかりますか? 洗濯洗剤ではありませんよ。どちらかというと柔軟剤。頭の柔軟剤を作った人です。フランスの喜劇作家で、350年くらい前の人物。
彼女はひとつ劇を見たことがあるそうで、フランス語でもわからない言葉(古い言葉など)があったとのこと。そこから頭のなかの言語について話しました。【日本語⇔英語⇔フランス語】から【日本語⇔フランス語】に進み、もう夢をフランス語で構成することもあるほどになった彼女の話はとてもおもしろく、そこから日本のコミュニケーションの独特さについての話に発展しました。





今日はここからが本題。
わたしもインドで軽くやられましたが、彼女もフランスでそうとうやられたという話。



たとえば、

「ねえ、こんなことしたの。見て見て〜」
と話しかけた場合。




インドだと



 Aさん「ねえ、こんなことしたの。見て見て〜」

 Bさん「それいくらかかったの? いくらで売るの? 儲かるの?」



わたしの周りだけかもしれませんが、実利的な話に至ることがあります。
会話だと「いいね〜」とか「すご〜い」みたいなリアクションが普通に期待できる状況とは限らないんですよね…。あったとしても




 Aさん「ねえ、こんなことしたの。見て見て〜」

 Bさん「いいじゃないか。さすが君はわたしの友達だ」




リアクションがあるにはあっても、中身がちがう。なんか食われてる。なんか食われるインド。
フランスの場合は、別の角度でしんどいようです。「見て見て〜」なんてことをしても、何も起こらないと彼女は言います。




 Aさん「ねえ、こんなことしたの。見て見て〜」

 Bさん「・・・(で?)」




どこにリアクションをすればよいのだと。
そういえばインドでもこういう感じ、あったなぁ。




 Aさん「ねえ、こんなことしたの。見て見て〜」

 Bさん「それで君は、幸福を感じるのですか?」




こんな展開ある…。いきなりスピリチュアルな問い(笑)。問いを立ててくる。これはある意味「・・・(で?)」ってのに近いかも。
フランスにいる彼女は他人同士のやり取りを見ていて「えええこんな話の展開になって、大丈夫なの?」と驚くことがたくさんあり、はじめの頃はいちいち傷ついていたそうです。この「いちいち傷つく」という経験がなんとも重要。
わたしもインドで「いちいち傷ついて」いたのですが、毎回瞬時に「相手の顔が濃くて目ヂカラがあるからって、ひるんではいけない」という思考に切り替え、なんとかしのいできました。でもそのときの「傷つく感じ」が自分でこしらえた幻想であることも同時に理解しなければいけない。というか、行ってみたらわたしが学んだインドのヨガ道場はそういう勉強の場なのでした。


このようにフランス人とインド人の話をしながら、これがSNSの使いかたにも特徴として出るので、おもしろいよね! という展開に。このへんだけはIT系OLの同窓会っぽかった。
日本でのコミュニケーションは、マイルドであたたかい。「見て見て〜」とやれば、なにかしら柔らかくポジティブなリアクションが得やすい。もうこれだけで、ずいぶん贅沢という感じがします。
お互いに「ないものねだりの環境」を感じながら、時間があっという間に過ぎていきました。