うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

ルーム ROOM(映画)


あっという間に進んでいくし、普通だったらクライマックスになるようなシーンは中間で、そのあとがすごい。
この映画、ものすごい人気ですね。公開から1ヶ月経っているのに満席でした。これは観たら黙っていられない、そんな映画です。
雑巾を隅々までギューッとしぼる感じで、あんな感情もこんな感情も、知っているつらかったことをいろいろ思い出してしまう。
ものすごい話なんです。誘拐拉致監禁中に出産したので、母親は20代前半の青春を奪われ、子ともは外に出たことがない。脱出した後、母と子どもが懐かしんだり失ったと感じるものが違っていく。ここからの心理描写がすごい。親子が同じ敵と戦っていた前半とは、すっかり風向きが変わっていく。


母親側に気持ちを重ねたら苦しいことしかないし、マスコミの追い詰めかたもすごい。息子にスマホをぱっと与えちゃう自分の母にブチギレるシーンに、失った7年の時代感がどっさりのしかかってくる。それまで監禁部屋で可能な限りの教育を自分で考えてやってきた母親がキレちゃうシーンで、わたしは完全に涙腺決壊。
子どもが監禁されていた部屋の暮らしを懐かしむ気持ちも、わかるんですよね…。子どもの頃、望まない贅沢を大人が施してくれて、喜ぶ演技をするのが苦痛だったのを思い出しました。大変な経験をした子どもに「与えたものに飛びつく子どもらしさ」を大人が求める様子がしんどい。わたしは、こういうときにどうしていいかわからなそうにする大人のほうが、信用できるな。なんて思いながら観ました。


人によって、引き出される感情にかなり差の出る映画だと思います。経験の奥底の感情を引っこ抜いてくる。
監禁事件があると「逃げられたのではないか」みたいに言う人がいるけど、「懐かしみ」と「安心感」はセットになっているから、懐かしみの場所が変わってしまったら、心はその場所を求めてしまうのだと思う。これさえあればいい、というマインドにリセットしまったら、きっとそうなる。それもひとつの防衛本能。生まれたときから拉致されているけどそれを知らなかった子どもを見ていて、そんなことを思いました。
ここまで書いてもぜんぜんネタバレじゃないくらい、細かい見どころの多い映画です。
原作小説があって、さらにその元になった事件があるようなのですが、事実が想像を超えすぎていて驚きました。