うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

言葉尻とらえ隊 能町みね子 著


著者が句読点の打ち方とメンタルのくずれの関係性に言及している人だと知り、気になって読みました。
読んでみたら期待通りの指摘が満載で、わたしが日々モヤモヤする案件が次々に成仏して行きました。ありがたい。
文章のリズム全体へのツッコミで、叶姉妹のブログが引き合いに出されていました。これがまたおもしろい。わたしはここで何度も叶恭子さんの言葉で構成された「知のジュエリー12ヶ月」という本を絶賛していますが、あれは「よりみちパン!セ」というシリーズの編集力のすごさを感じる本でもあります。
たしかに叶姉妹のブログは、とくに恭子様のほうではないかと思われる文章は、以下の指摘の通りなのです。
(以下、「叶姉妹の私服はレンタルなのでは?」という疑問に本人が反論したブログ文章に対して)

 私はリズムのおかしいこのブログに、日ごろ長い文を書き慣れない年配の人の雰囲気すら感じます。だから唐突に登場する小学生ワードは一層強烈な不協和音となり、文章の不恰好さは叶姉妹の存在の違和感と絶妙に辛苦をします。文体がこんなに本人の中身をさらけだしているんだから、私服がレンタルかどうかなんてどうでもいいさ。

「文体がこんなに本人の中身をさらけだす」ってのは、あるんですよね。



この本のなかで一番「これ、わたしもほんとうに嫌いなやつだ」と思ったのは、この指摘。
(「NEWS ZERO」の小見出し「小6女児が、転落死。」に対して)

 あの小見出しはずっと前からそうなんだから今さらの話ですが、先日ボーッと「ZERO」を見ていて、「小6女児が、転落死。」と画面に出たとき、「たのむから句読点は取ってくれ!」と強く思ったのだ。


(中略←でもぜひ読んで欲しい)


「小6女児が転落死!!」だとしたら、不謹慎だとおそらく批判を浴びるでしょう。でも、感情を煽るという点では「、」も「!!」もいっしょです。どちらも下世話さが底に見えます。

こういう低俗さは日々広がって、もはや「これくらいはセーフ」という領域が広すぎてついていけない。この本のほかのトピックでヤフー・ニュースの仕様への指摘がありますが、わたしも同じことを感じています。(なかでも、オリンピックのメダル予想表示についての指摘がすばらしい)



わたしも「おっと。日本語としては間違っていないが、それは…」みたいなことが気になりがちです。
ヨガをしていると、ボディ・ワーク系は言葉の事故が起きやすい死角だらけの業種であることがよくわかります。
若くてかわいらしい女性のヨガ・インストラクターが、ブジャンガ・アーサナの説明をしながら「下半身を固くして」と言っていたりすると、「まちがってないけど…」と思う。
年上のインストラクターがシャラバーサナの説明で「下腹部に手を入れて」と言ったのがツボに入ってしまったこともありました。この人は想定外の話もしやすい人だったので、あとで「さっきの、わいせつ罪のニュースっぽく聞こえました!」と言ったら「あー。それだ。わたしも、なーんか、気になってたのよ。なんか、なんか変だと思ってたの」と。
この本にも「下腹部」についての言及があり、ふいにこんな「ヨガ指導の微妙な表現あるある」を思い出しました。


言葉は流れて変化して相対的に判断される。この本は、感情だけちゃっかり垂れ流してあとは他人のせいにしてしまえと思っているセコい表現までも、つぶさに見つけて突っ込む。でもライト。ライトに書けちゃってるのがすごい。