うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

冒険の国 桐野夏生 著


これまで新書や技術書みたいなものばかり読んでいたわたしが、ここ数年でメキメキ現代小説を読めるようになってきております。
小説も学生の頃までは読んでいたのですが、社会人になってからはあまり他人の人生物語に自分を重ねる余裕がなかったのか、読む数が減りました。読んでもエッセイや短編がほとんどでした。
わたしの周囲はもともと読書家が多くいろいろな本を教えてもらえるのですが、「桐野夏生小説はどれもドロドロなんだけど、クセになるんだよねぇ」と聞いていたので、薄い本からトライしてみました。わたしにはこれでもじゅうぶんパンチがありました。
団地や近所づきあい、幼なじみとのつきあいの話なのだけど、

あなたがたの楽しみは同時に他人の苦しみ。この言葉は、世の真理でもあるような気がした。

これが、じわじわくる。あとあと全体に染み渡る。
わたしはこれはネットの中でもある真理と思っています。誰かと過ごした楽しかったことを日記っぽく書かないようになったのも、そんな理由から。観光地の紹介や商品紹介のようにコンテンツ化する形に整理しないと人前に出せない。なのでこの小説はズバッとほんとうのことを書いてあるなぁと思いながら読みました。
1988年に文学賞に応募した作品を加筆修正したそうで、時代はまさにバブル。でも人の心情はいまも変わらない。従業員が客のプライベートを客の家族に話すなどのことは、いまだとコンプライアンス的に絶対NGだろと思うことだけど、やる人はいまだに平気でやる。「えええ。そんなに急に打ち解けて飲んだり、するーーー?!」という流れも、やる人はいまでも求めてくる。そういう気持ちと時代の変化を感じるのもおもしろい。
深く斬り込まずに感想を書くことが難しい小説ですが、「エグいんだけど、クセになる」というのはすごくよくわかりました。


冒険の国 (新潮文庫)
冒険の国 (新潮文庫)
posted with amazlet at 16.04.16
桐野 夏生
新潮社