まえに書いた「社会生活と平行して少しずつヨーガに近づきたい人へ、わたしがおすすめする特選書籍10」が友人やヨガ仲間に好評で、ほめられてうれしくなっちゃったりして…、いけませんね。気をつけなくちゃ。
そして今日は、夏目漱石だけでやります。先日まとめてみたら30冊もあり…。これじゃあ、どれから読んでいいかわかりませんものね。ちなみに今日の「ヨギックに紐解く」の根拠は、夏目漱石は特別だからです。夏目漱石の人間の心のはたらきの分解のしかたを見ていると、これヨーガ・スートラに書いてあるあれか…?!となることがとても多いのです。
夏目漱石は子どものころから紙幣の人だし、勝手に偉大なおじいさんのイメージでいたけれど、おじいさんじゃない。30代後半で小説家を始めて(初期は講師と兼業)、49歳で亡くなっちゃってる。なんなら同世代のメンズなのです。一緒に飲みに行ってたかもしれない年齢の人だと思うと、あの紙幣の人がいっきに近づいてきます。(こない?)
わたしは夏目漱石が小説を書き始めたくらいの年齢で夏目漱石を読み始めたので、「ああ、グルジはこの年齢の頃にこういう意識を分解してあの作品を書いたのだよな…」と、作品をイメージしたりします。(脳内でグルジと呼んでいます。口からもたまに出ます。グルジはインドの言葉で師とか先生という意味です)
情報も娯楽も少ない時代に自分はこれだという鉱脈を見つけ、そこに熱量を注いだ人が成し遂げてきたことは格別だなと思います。小説家であり思想家であるところも好きです。夏目漱石という文字列そのものが、たくさんの思想家を抱えた「哲学者のタレント事務所」のよう。しかもその中に、インド人がたくさん所属してる!
わたしは今年の春に「道草」を読み、これで長編は全部読んでしまいました。わたしは自分が主催する形で読書会を開催しているので5回以上読んでいるものも多いのですが、今日は数ある作品の中から「こんな思いを言語化できずに悩んでいるなら、これをどうぞ」という書きかたでおすすめします。
あーいま自分、卑屈だな… というときに、処方箋として夏目漱石はとてもマイルドながらじわじわ、ときにガツンと効いてくる。おすすめです。
- あなたは安泰だろう、自分はだめだろう…と、周囲の人の未来ばかりが順調に見える時に ⇒「三四郎」
- これだから田舎の人は… なんて口にしたら差別発言で叩かれそう。窮屈! と思った時に ⇒「坊つちゃん」
- なぜそこまで演じなければいけないのか。わたしはいつまでもあなたの奴隷か。と疑問がわいた時に ⇒「明暗」
- 師って、そもそも純粋な人にしか師になってくれないの? と思った時に ⇒「門」
- 交友関係まで消費の対象とする、抜けられぬ欲深い人間関係にうんざりした時に ⇒「道草」
- こじれてるな…。なにか、やらかしそうだな…。という身内との関係に疲れた時に ⇒「行人」
- 合理的にやっても情緒的にやってもdisられるんかいっ! とボヤきたくもなるわって時に ⇒「草枕」
- わたしがこれを実現したら、人に妬まれる。自分で頑張った成果ではあるが。という時に ⇒「虞美人草」
いかがでしたか。今年の夏の読書の参考になれば幸いです。
出だしに「文鳥」はおすすめです。先日、読書家の友人に 「『文鳥』を読んだら島倉千代子が小鳥に見えるようになった。『人生いろいろ』のあの首、腕の振り方、白い着物…。思い出すのは山田邦子バージョンなのだけど」といったら爆笑されました。人生いろいろです。
▼夏の読書会のお知らせ。今年の夏は「行人」をやります
- 夏目漱石読書会『行人』をインド哲学視点で読む会(8月26日開催/世田谷ものづくり学校)
お盆をきっかけに振り返る、ままならぬ家庭のあれこれを思う日々の薬にもなりそう。他人だからこそ話せることって、多いものです。はじめてのかたも、気負わずどうぞ。