うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

リリーのすべて The Danish Girl(映画)


こりゃすごい映画だわ。ストーリー抜きに、ファッション映画として観ただけでもハイセンスすぎる。服、髪型、インテリア、そしてそれを包む景色。こんなのアリかってくらい、どの瞬間を切り取っても美しい。
ストーリー自体は夫が主役で、視点は妻から。その妻の葛藤が「女」をナマナマしくあぶり出す内容なので、心情描写的にはいちいち苦しい気持ちになる。でも美しい映像によって惹き続けられて終わる。ナマモノはこのくらい美しく包んでくれないと、とてもじゃないけど最後までついていけない。でも終りまであっという間に感じる。


 妻が夫に言う「自分のことばっかりね」


 夫が妻に言う「(自分は)その愛に値しない」


これらの言葉が、ブーメランになるかのような結末を迎える。
肉体が生まれながらに女である女(妻)よりも、もとは男性で、夫であったのにどんどんウザくなっていくリリーのメンタルがきつい。
この映画は、すべての女性が男性から視線を向けられるときに感じたことがあるであろう、そして折り合いをつけながらやり過ごしている「日常にある被暴力体験」をすごくじょうずに表現していて、苦しくなる。



 肉体は魂の乗り物。そこまではわかった。
 で、ドライバーはどこにいるの?
 あのときは、どこにいたの?
 このときは、ここにいたの?



ということを延々やっていくなかで、「瞬間の所作に認識の発現が!」ということも随所に挟まれている。わたしは夫がのぞき部屋へ行くシーンで「こうきたか…」となった。のぞき部屋で描かれる主体と客体と認識ドライバーの移り変わりの映像表現は、こんなの観たことないわ。このテがあったか。というくらいの感動というか、ものすごいヤラレタ感。
どこまで実話かはわからないけど、ストーリーは同業者(夫も妻も画家)との力関係から描いています。これ、脚本もすごいのよね…。
完璧なものを観せれたような気分だし、他に出てくる女優さん・男優さんがマドンナやプーチンさんを想起させるビジュアルなのも気になる。「ここまで狙って作ってる?」と思うほど。ファッション&インテリアがデンマーク時代・パリ時代でかなり変えられていたり、象徴的に描いているものの奥行きがすごすぎて、映画の後も「あのセリフは、あの場面は、あのビジュアルは…」と反芻がとまらない。
「こころはどこにあるのか。わたしはどこにあるのか」ということについて考えてみたい人に、激しくおすすめします。(ただいま全国ロードショー中)


▼普通の予告


▼ファッションのすごさもわかる特別映像