うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

あなたにありがとう。 松浦弥太郎 著


ちょっと立ち読みしたらとてもいいことが書いてあったのでKindle版で読みました。
松浦弥太郎の仕事術」はライフスタイル全般が題材でしたが、この本は「対人関係」にフォーカスされています。「仕事術」がライフスタイル=所作も含めた禅的な示唆であったのに対し、この本は親鸞大乗仏教のような色合いが濃く、この本を読んでいると、人との接し方はその人の苦労の歴史そのものであるなぁと感じました。後悔、決裂、裏切りなども経験して、この境地にたどり着いているのだろうな…。ズシンと響く教えがいっぱいです。わたしもこれからたくさん苦労をすると思うけど、まだ「ありがとう」の気持ちに限定的なものがある。修行が足りないと感じました。
著者さんは1965年生まれの人でまだお若く、わたしがそんなにジェネレーション・ギャップを感じるほどの年齢ではないのだけど、紙でのコミュニケーションを重視するところに、出版畑とIT畑ではコミュニケーション・ツールのマテリアル感が少し違うかな、と感じました。が、「仕事術」のほうでは「名刺は不要」と言及されており、つながりをオンライン上で可視化したり、事実上の名刺集めや名前狩りと同じようなことをしているIT系ビジネスマンの感覚よりは確実に澄んだ価値観です。
この本を読んでいて「贈り物」の考え方を通じて、自分の価値観をあぶりだされたような気もしました。あと、「弱さを武器にしない」の章は、ヨガに依存していると感じる人は必読。とても重要なことが書かれています。



この本を読んでいると、わたしもふだん心がけていることが出てきて共感します。
こんなことです。

人間をカテゴライズする情報や知恵なんていらない。
(決めつけない より)

人に対する先入観やノイズを与える行為というのは悪徳カルマのように思っているのですが、感じるほうもそれがカルマになるというようなことが書かれています。



僕は彼に心を開いています。しかし、個人的なことを告白しようとは思いません。
秘密を共有したり、打ち明け話をして親しくなる人は多いようですが、「自分の心のうちは、自分のなかにしまっておけば良い」というのが僕の性分なのです。
(近づきすぎない より)

わたしは、「個人的なこと」は消費されるものと思っているところがあり、「個人的なこと」を話される場面では、お腹がすいていないのに「どこどこ御用達の極上の一品です」という品を出されているような気になったりします。欲に対する餌に見えるのです。個人的なことを話さない人とのほうが、よい関係が長続きしているような気がします。



多くのケースで釘をさす側は、無意識に相手をコントロールしようとしています。
(支配しない より)

わたしは年配の人がたまに使う「お灸をすえる」という表現に「追いかけてまで支配しに来るのか!」と、ゾッとします。



ベストなことというのは、たいていどちらか一方にとってのベストであることが多いものです。(中略)「つきあいきれない」とどちらか一方が思うことが重なれば、やがて関係はこわれてしまうでしょう。
(大きな地図をもつ より)

「ベター」探しの道を推奨する著者さんの指摘がグサグサきた。実際、思い浮かぶ場面がいくつもある。




この本はできるだけ若いうちに読んでおいたほうがいいと思いました。
あと、恋愛感情でなくても、尊敬でもそれ以前の感じのよさでも、「好きな人」「好きになりそうな人」がいる人にもおすすめ。さらに、「人間不信」な人にもおすすめ。それは読めばわかります。
わたしは、ちょっと人間不信でガードが硬すぎるくらいの人のほうが信頼できる今日この頃です。

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