うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

たくさんありすぎる「やめとけ」と「おすすめ」(シヴァ・サンヒター 3章32〜35)

先日、ハタヨーガ・プラディーピカー(以後H.P.)にあった「6つの大切」を紹介しましたが、今日はシヴァ・サンヒター(SHIVA SAMHITA) からの紹介です。
順番的にはゲーランダ・サンヒター(以後Gh.S.)というのがH.P.の次に有名なのですが、Gh.S.はなんというか、ヨーダとルークのシーンだけを切り取ったような内容なんですね。喩えがアナキンじゃないところがこれまたミソなんですがその話はそのうち書くとして、今日は「奥義書も後発になるほど後発ならではの面白味が炸裂してて、古典とはいえ、どうにも笑ってしまうよ」ということを書きます。


ヨーガ・スートラの時代にはヤマ・ニヤマ(禁戒と勧戒)くらいガッチリしていたものが、シヴァ・サンヒターになると、「やめとけリスト」と「おすすめリスト」のようなユルさが出てきます。コーランのようにそのレベルが段階的・強度で定義されていないままリストされる。いちおう真面目に読んではいるのですが、「やっぱりここはツッコんでおくところなんじゃないか、スルーしていいのか?」という気持ちが湧いてきます。



シヴァ・サンヒターにも他の奥義書にある流れで「このヨーガ習得の修行の海を早く渡る方法を教えよう」みたいな導入で禁戒勧戒っぽいことが書いてあります。これが、どういう編纂でそういうことになったのかわからないのですが、美容健康を訴求しているうちに余計なサービスがいっぱいついちゃったヨガセンターみたいなことになっています。
「やめとけリスト」で23項目、「おすすめリスト」で19項目。
・・・・・・多いよ! そして、ツッコミどころ満載です。


英文で読んでいるので英文のまま書きます。

この超豆本を移動や待ち時間にちくちく読んでおります。(ISBN 81-7303-234-3)

<3章から>
1 : acid
2 : astringents
3 : pungent substances
4 : salt
5 : mustard
6 : bitter things
7 : much walking
8 : early bathing ( before sunrise )
9 : things roasted in oil
10 : theft
11 : killing ( of animals )
12 : enmity towards any person
13 : pride
14 : publicity
15 : crookedness
16 : fasting
17 : untruth
18 : thoughts other than those of moksha
19 : cruelty towards animals
20 : companionship of women
21 : worship of ( or handling or sitting near ) fire
22 : much talking
23 : much eating

10の盗みまでの間に料理ネタが多すぎるのだけど、嗜好という流れからいくと一面では納得。でもやっぱり字列で並ぶと楽しげ、となる。なんだかとても、「新しいなこれ!」という感じがしませんか。
わたしは嫌いじゃないんですこのノリ。動物案件はまとめたほうがいいのにとか、順番がめちゃくちゃなようでありつつ、動機や心の働きベースでいうと、この順番が妙にしっくりいく。なんというか、刑法っぽいんですよね、並びが。にしても、5だけ異常に具体的ですねぇ。なんかあったのかな。
14の「知れ渡ること」は、よくぞ定義してくれました、と思う。こんなブログを書いていて言うのもあれですが、やっぱりヨーガは密教ですから。
20の「女とツルむな」も、いいですねぇ。ラーマクリシュナ師匠ばりの言いっぷりがたまりません。




さて、「やめとけリスト」ほどのオモシロさはないのですが、いちおうセットで「おすすめリスト」があったので紹介しますね。

1 : clarified butter
2 : milk
3 : sweet food
4 : betel without lime
5 : camphor
6 : kind words
7 : pleasant monastery or retired cell
8 : hear discourses on truth
9 : his household duties with vairagya ( without attachment )
10 : sing the name of Vishunu
11 : hear sweet music
12 : have patience
13 : constancy
14 : forgiveness
15 : austerities
16 : purifications
17 : modesty
18 : devotion
19 : service of the Guru

わたしはダメヨギなもんですから、「出だしから食いしん坊っぷりが炸裂しすぎではありませんか」とか、「おっとここでヴィシュヌの顔を立てますか! ブラフマーはここでも置き去り……」とか、ついそんなことばかり考えてしまうのです。一般的に大事なやつが12番以降にドスンとまとまっているのも、なんだか微笑ましいくらい「ノリで作ったでしょ!」という羅列。




序盤に「こういうことを言う人もいる、また一方でこういう考えの人も……」という節が連なるところがありました。いろいろな人が勝手にヨーガを説くようになって、「こらこら、そういえばシヴァはマハーヨーギと言われる偉大なヨーギであって……というバージョンでこれも古典にいれてちょうだい、ドーン(入稿!)」という雰囲気がしなくもない。



これから世の中は情報の咀嚼力がモノをいう時代になります。
ヨーガはスピリチュアル! インド思想は偉大! 全部なんだかすごい! というざっくりな思い込みでとりかかると膝カックンなことがよくあります。いつもバランス感覚を求められる。いいメソッドよのう。