先日紹介した本「タントラへの道」の「タントラ」の章にあった「ブッダ群と呼ばれる五つの基本的な性質(エネルギー)」をご紹介します。
タントラの伝統ではエネルギーをブッダ群と呼ばれる五つの基本的な性質に分類する。
からはじまる記述が興味深かったので。
要約してご紹介します。この本によると
それぞれのブッダ群には
- そのエネルギーに結びついた感情があり
- 感情はそれぞれ特定の<知慧>あるいは目覚めた心の状態に転換されてゆく
- 色彩、要素、風景、方向、季節そして現象など世界のあらゆる相に結びついている
のだそうです。
各性質ごとにリストにします。
■ヴァジラ
- 水の要素に結びつく。
- 色は白。
- 東方、暁そして冬に結びつく。
- 怒りに結びつく。
- 感触とか相互の関係という点を重視する。
- 自分を守ろうとする無遠慮で直感的な怒りの経験は、平らで光沢のない白い紙のようでもあり、それは逆にものごとを反映して輝く光になる可能性も含む、「鏡のような知慧」。
- 鏡のような知慧(大円鏡智)に転換される。
■ラトナ
- 地の要素に結びつく。
- 黄色、太陽光線に結びついている。
- 南方と秋、肥沃さ、たえまなく与える豊かさに結びついている。
- 誇りと大地、堅固さ、山や丘、ピラミッド、建物と結びつく。
- 自分がほぐれることを恐れ、防御を積み重ね、要塞を築いている。
- 平静な知慧(平等性智)に転換され、それはすべてに充満する。
- 与える性質を持ち、午前中の中ごろのような甘美な解放をもっている。
■パドマ
- 火の要素につながっている。
- 西方と赤色につながる。
- 初春に関連している。冬の厳しさがやっと和らぎ、夏への約束が感じられる。
- 情熱、つかみとろうとする性質、所有欲に関わる。
- 情熱はヒステリックでノイローゼ的な性質を含んでいる。
- 燃えさかる火、そして欲望の消滅していく性質は、コミュニケーションをとおしてものごとをひとつにまとめてゆく知慧に転換される。
- 目覚めた状態では情熱の激しさは慈悲の暖かみに転換される。
■カルマ
- 風の要素につながっている。
- 風は、動く。行動的な側面を持つ。
- 緑、野菜や草の色、成長するエネルギーの色。
- 北方の夏を連想させる。ゆっくりと夏を味わっていることができない、晩春のようでもある。
- その雰囲気は日没の後、たそがれ、一日の終わりと夜の始まり。
- 嫉妬や羨望の感情につながっている。
- 絶対的なパラノイア(妄想)といったほうがよいだろう。目的を何ひとつ達成できないという感覚がつねにあり、他の人の成功を見るといらいらする。
- すべてを成し遂げる行為(成所作智)の知慧に転換される。
■ブッダ
- 空の性質に結びついている。
- 色は青。
- 酸素のようなもの。
- 基礎、「基本的な場」。
- 落ち着いた堅固な性質。土臭さ、おもしろみも何もない土臭さ。どこか孤独で広大。
- 無関心に結びつき、あらゆるものに浸透する性質をもっている。
- 無関心の行動要素は無視すること。ものごとを追求したり戦うよりも無感覚を保とうとする。そして怠慢で愚かな性質が他のあらゆる感覚に持ち込まれる。
- すべてを包含する空間の知慧(法界体性智)に結びつく。無関心に含まれる疑いと怠惰が知慧に転換される。
- 知慧は莫大なエネルギーと知性を含んでいて、他のあらゆる要素、色彩、感情の中心を流れている。
- 五つの知慧の他のすべてに活力を与える。
それそれが、長所と短所を兼ねているんです。
うちこなりの解釈。
- 白い紙は黒く塗ろうと思えば、きれいに黒くなる。
- ずっと「そこにいる」のは保守的なようでありつつも、穏やかであたたかい包容力がある。
- ヒステリックに情熱も、喉もと過ぎればあたたかい感触にかわる。
- 他人の成功への嫉妬も、動いて的を得たときには、行為が知慧につながる。
- 無関心という怠慢は、ハードディスクの容量に余裕がある状態だ。いいものを容れる余地がある。
書いていてちょっと苦しいものもあったけど、こういう表裏の言語脳体操は、仕事に役立つと思う。
賛成の反対なのだー、ってね。
(ちなみに「五輪」の五色は五つの大陸を表現しているのだそうです)