うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

ブッダの真理のことば(ダンマパダ)中村元 訳


同じ本に「ウダーナヴァルガ」も収められている超お得な本なのですが、今日はダンマパダ(法句経)を紹介します。
仏陀の教えが、韻を踏んだ小粋なフレーズで怒涛の423本ノック。いずれもパワフルな打球ばかり。まっさんの「関白宣言」の歌詞のようなノリで気軽に読める、いつもバッグに忍ばせたい一冊です。
こんな具合に。(数字は句の番号です)

<さまざまな章から>

  • 7:この世のものを浄らかだと思いなして暮らし、(眼などの)感官を抑制せず、食事の節度を知らず、怠けて勤めない者は、悪魔にうちひしがれる。── 岩山が風にゆるがないように。
  • 50:他人の過失を見るなかれ。他人のしたこととしなかったことを見るな。ただ自分のしたこととしなかったことだけを見よ。
  • 165:みずから悪をなすならば、みずから汚れ、みずから悪をなさないならば、みずから浄まる。浄いのも浄くないのも、各自のことがらである。人は他人を浄めることができない。
  • 208:よく気をつけていて、明らかな知慧あり、学ぶところが多く、忍耐づよく、戒めをまもる。そのような立派な聖者・善き人、英知ある人に親しめよ。── 月がもろもろの星の進む道にしたがうように。
  • 291:他人を苦しめることによって自分の快楽を求める人は、怨みの絆にまつわられて、怨みから免れることができない。
  • 320:戦場の象が、射られた矢にあたっても堪え忍ぶように、われはひとのそしりを忍ぼう。多くの人は実に性質(たち)が悪いからである。
  • 330:愚かな者を道伴れとするな。独りで行くほうがよい。孤独(ひとり)で歩め。悪いことをするな。求めるところは少なくあれ。── 林の中にいる象のように。

わたしはここ数年、テレビやネットの傾向を見て320番の句にあるような「多くの人は実に性質(たち)が悪いからである」というのを感じてしまって、ことに最近はものすごい勢いでいろいろなことから遠ざかりがちなのですが、この本でずいぶん救われました。



インドっぽいわー! という句もあります。

<第11章「老いること」より>

  • 150:骨で城がつくられ、それに肉と血とが塗ってあり、老いと死と高ぶりとごまかしとがおさめられている。

ブッダお得意のフレーズ。どのパターンで聞いても、何度聞いても好きだわぁこれ。



ブッダ」という章には、ヴェーダウパニシャッドの教え(ヒンドゥー教)とジャイナ教がぐわーっと興隆した時代の雰囲気が見えておもしろい。

<第14章「ブッダ」より>

  • 181:正しいさとりを開き、念いに耽り、瞑想に専中している心ある人々は世間から離れた静けさを楽しむ。神々でさえもかれらを羨む。

「神々でさえも」というところがね。ヒンドゥー側ではブッダはビシュヌの化身ってことになってるけど、仏教側からは「もー。羨ましいくせに」みたいなスタンスに見えるのがなんとなくおもしろい。わたしの勝手な妄想解釈ですが。
ちなみに仏教側もけっこうひどいことをやっている。天空界の最高神インドラを「帝釈天」にしてしまって、しかもなんだかそれは説によってはとんでもないエロキャラだったりする。
インドの宗教哲学を学ぶ楽しみは、このおちゃらけた政権争いのようなぐちゃぐちゃ感にある。カオスの範囲を超えすぎている。



中村先生の本なので、まあとにかく注釈のボリュームもすごくて、それもまたおもしろい。訳者として「これを表現したかったんだ」というスタンスが書かれているのも素敵です。
法典や経典(教典)の訳というのは、訳す人にも思想の軸が必要なんですよね。他の訳も参照しつつ「しかしこれは後代の解釈であって、原義ではない。」と添えてあるものもあり、ステキ〜! キャ〜ッ! っと、なるわけです(本題に関係ないですが)。ああ素敵。