うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

ザ・フェミニズム 上野千鶴子&小倉千加子 著

東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ」とセットで、会社仲間のジュリちゃん(国産)が貸してくれました。うちこが自分で選ぶ本はどうしてもヨガや仏教、フィジカル寄りになるので、OL仲間が無邪気に「これ読んでー!」と貸してくれる本は新鮮です。そのチョイスも含めて友情が深まりますから、お友達のことをもっと知るきっかけにもなります。
この本は2002年の本なので、アグネス論争とか東電OLの事件、林真理子松田聖子の話題などが出てきます。「フェミニズム本」の定義がよくわからないうちこなのですが、オノ・ヨーコさんの「ただの私(あたし)」なんかもその部類に入るようです。
うちこが性別を意識する機会というのはヨガ道場で、「なんで男の人はこのポーズで痛がるんだろう」とか、「なんで膝がのびないかなぁ」などと思うことが主なのですが、たまにびっくりすることもあります。印象的だった実例を紹介してみます。


(ヨガ道場で)
週末に男性の生徒さんと、たまたま連続して会ったのかな。そこはよく覚えていないのですが、たぶん師匠に頼まれてお手本やったりして長時間いたときだと思うんですね。ある日、「いつもここにいるけど、いいの? 生活できてるの?」みたいなことを言われたことがあります。
週末ほかにやることがないと思われたのか、仕事をしていないと思われたのか、とにかくさっぱりわけがわかりませんでしたが、「ご心配にはおよびません」という回答になりました。基本的に睡眠時間がめちゃくちゃ短いので、長時間道場にいても、いろんなことしてるんだけどなぁ。もしかしたら、「もう、大変なんですぅ」という回答を求められていたのかもしれませんが、いきなりその質問はないだろうと思いました。


前置きが長くなりましたが、「女性だからこういう扱いを受けたんだな」とか「女性が考える女性」とか、普段あまり意識することがないことに目を向けるきっかけになる箇所がいくつかありましたので、紹介します。ちなみに全般、インド人並みの問答っぷりです。

<63ページ ハイクラスな女の「自己保存」 より>
(前提注釈:ここでいうハイクラスは、一応ブランドの四大を出た、あるいは大学院クラスを出た人たちのこと、だそうです)
小倉:その層の人たちの結婚の条件っていうのは、短大卒の人たちの「専業主婦になって、完全に経済的に依存する結婚」とは違う。何かと言うと「自己保存」なんですわ。
上野:生存じゃなくて、自己保存?
小倉:階級によって結婚の条件が、生存→依存→保存、とこういうふうに変わっていってるのね。
上野:さすが! 小倉千加子はネーミングがうまいね。

これは、ちょっと面白いなと思いましたが、自分も含めて周りのヨガ仲間を見ていると、保存の先にある「静観」というスタンスの人が増えているように思います。これは精神的自立なのでしょうか。

<70ページ フェミニズムはシングル女のバイブルか より>
上野:さっきも言いましたけど、私、人の言ってることじゃなくて、やってることでしか判断しません。

うちこもそうです!

<113ページ 夫婦別姓は支持しない より>
上野:異性のカップルで、二人で末永く仲良く、お互いにルール破りをしないで、一穴一本主義でやりたいひとは趣味でやったらよろし。そんなものに法的な届け出や保護を求めなさんな、ということですね。

「一穴一本主義でやりたいひとは趣味で」って(笑)。

<154ページ 専業主婦とフェミニズムは結託できるか より>
小倉:介護をやったりパートをしたりして、ほとんど自分の時間がないような主婦にこそ、フェミニズムは手が届かなければならない。なのに、そういう人は(講演に)来なくて、来なくてもいい人が来るんですよ。

「来なくてもいい人が来る」って言っちゃうところが、オトコだねぇ(笑)。

<162ページ 性的自由は自由の根源 より>
上野:最近、私は結婚というものをこう定義してるんです。これはあまりにわかりやすいから、方々で使ってるんだけど、「自分の身体の性的使用権を生涯にわたって特定の異性に対して排他的に譲渡する契約のこと」っていうんです。すごいでしょう(笑)。
小倉:ちょっと長いな(笑)。短くしてちょうだい。
上野:でも、どの用語も削るわけにいかないんです。

「排他的に譲渡する」って、「排他」したうえに「譲渡」ですからね、すごい契約だ。

<297ページ あとがき(上野千鶴子) より>
小倉さんとわたしの対談をのぞき見したあなたは、共感したり、反発したりしながら割って入って欲しい。球はあなたに向かって投げかけられている。──「わたしならどう考えるだろう?」

ちょっとそのインド人ふたりにはついていけない感があるものの、問題提起のありかたとして、すごく真摯ですよね。

<307ページ 文庫本あとがき(小倉千加子) より>
過去から学んだことは、人間は簡単には変わらないし、人によって変えられるものでもないということである。置かれた状況が、ものの見方を変えるのだということであり、これが諦観なのか希望なのかは、分からない。

たぶん希望なんじゃないかな、と思います。こういう自分でいたい、という状況と戦って葛藤しちゃっているんじゃないかと。うちこも若いときはそうだった気がしますし、いまもそんなに年寄りでもないですから、そういうところがあると思います。


この本を読んでいて、女性の心の拘束のひとつに「まわりから淋しい人だと思われたくない」というものが存在していて、いろいろと自分で苦しんでいる人が多いのではないかなと思いました。
うちこはヨギになってから「動物のうごきから人間である自分を意識する」ということを繰り返す毎日なので、そういう拘束から少しずつ離れていっている気がします。二つに一つしかない上で、女性という性別を持った。骨盤の形も違うし、子宮があって月経もあるから引力も影響するし……、と自分のことを見ていくと、出産という性能について考えることもありますが、「自分の人生のなかでの出産」というものを意識するかというと、そういうことでもない。
社会的にずっとひとりで生きていくのかな? という視点で将来を考えるにあたっては、「自分が社会に対してなにをするのがよいかしら」というところからしっかり向き合わないといけませんね。

女性と同じように、男性も「種を残す性能」について考えるのでしょうけれども、それってダンディズムっつーんでしょうか? なんか言葉の響きがポマードくさいですね(笑)。

ザ・フェミニズム (ちくま文庫)
上野 千鶴子 小倉 千加子
筑摩書房
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4 対談のいいところが出ている
5 どつき漫才で学ぶフェミニズム