うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

男一代菩薩道―インド仏教の頂点に立つ日本人、佐々井秀嶺 小林三旅 著

先日「破天」の感想を書きましたが、この本は2004年9月29日〜11月4日に取材が行われ、帰国から二ヵ月後の12月28日の深夜3時10分に放送された番組『NONFIX 男一代菩薩道』(フジテレビ系)の書籍版。
番組のディレクターさん視点での本なので、まったく佐々井さんについて知らない人でも、テレビを見るような感じで読めると思います。DVD化されないかなぁ。
写真は、本の冒頭にあったとても素敵な笑顔の写真を拝借しました。この本の取材前、取材後のエピソードに、山際素男さんも登場しています。


この本の面白さ、佐々井さんの魅力をうまく切り出せるかな。何箇所か引用紹介します。

<35ページ 「マイノリティ・コミッションの仏教徒代表」より>
佐々井さんの後ろには三枚の額縁が掲げてあった。左側にチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマの写真、真ん中には巨大なドーム、何かの施設だ。右側のもう一枚は背広を着た大橋巨泉に似たふくよかなインド人の肖像画

そうなんですよねぇ。尊敬する人を聞かれて、アンベードカル氏の名前を出しても見た目が大橋巨泉なので、「えっと、この人は…」というリアクションをされて困ります。


<38ページ 「マイノリティ・コミッションの仏教徒代表」より>
(インタビュー形式)
──今のインド仏教の現状をどう思われますか。
佐々井:私はインド仏教の信者、つまりアンベードカルを信仰している人は、人口の一、二割はいると見ています。しかし、国勢調査の数字にはそれが現れません。信者は不可触民に与えられている保障や優先枠が欲しくて、選挙などの機会に作られる住民登録では不可触民として登録してしまうからです。日常的には仏教徒として生きているのですが……。

インドの実情。山際素男氏の「不可触民―もうひとつのインド」に、もっと生々しい実情が書かれています。


<68ページ 「私たちはブッダのダンマを選ぶ!」より>
佐々井さんが日本人とはいえ、日本からの客はやはり珍しいのだろう。僕に興味津々といった感じだ。片言の英語やヒンディー語で、とにかく僕に何かを伝えようとしてくる。遠慮だらけの日本での生活のことを考えると、僕にはその様子が清々しく見えた。

うちこがインドへ行ったときも同じように感じました。みんな、目をキラキラ(ギラギラ?)させて話しかけてくる。


<131ページ 「佐々井さんが希求する菩薩道」より>
佐々井さんは急に「南天鉄塔について言うべきことがもう一つあったんです」と言い出し、つらつらと喋り始めた。
南天鉄塔の模型が、京都の仁和寺にある。ずっと昔の偉い坊さんが作った、仁和寺門外不出とされるものでね。ところが、その門外不出のはずのものが私の手元にもあるんですよ。しかも、それと同じ図が、ヒンドゥー教のクルマプラナー(亀の化身)という聖典にも載っている。ちょうど同じ時代なんですよ。

これは、次に京都へ行くとき用のメモ。


<162ページ 「私は永遠の求道者ですから」より>
佐々井さんは、自他ともに認める「アンベードカルの後継者」だ。その賞賛、尊敬ぶりも並ではない。
「アンベードカルは、『私の仏教は大乗でも小乗でもない。お釈迦さんが唱えたオリジナルの仏教というものを、私は広めるのである』と言いました。
ところが、その御釈迦さんが、どこまで本当のことを言っているのか。つまり、どこから後が、ほかの(弟子などの)人が付け足したところなのか。後世の人間には、これが判断できないんです。
アンベードカルはそれに対して、われわれが受け入れられないもの、つまり『これはおかしいじゃないか、お釈迦さんのこの言葉、ちょっとおかしいぞ。ちょっとヒンドゥー教のようなことを言っているぞ』というものは、お釈迦さん本人が言った言葉ではないぞと思いました。『素直にパッと胸の中に飛び込んでくる言葉、それがお釈迦さんの本当の言葉である。そう思いなさい』と言ってますね」

いろいろな点で、ねじれた解釈があるのでしょう。


佐々井さんはインドへ行く前、タイでヴィパッサナー瞑想をされていたこともあるそうです。さまざまな不思議な導きや苦行時代を経ながらも、佐々井さんの言葉はどれも「インドの現実のなかで生きる男」の言葉で、「今に生きている男の言葉しか出てこない」ところに魅了されます。

男一代菩薩道―インド仏教の頂点に立つ日本人、佐々井秀嶺
男一代菩薩道―インド仏教の頂点に立つ日本人、佐々井秀嶺小林 三旅

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