うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

麦秋(ばくしゅう・映画)

はじめて小津映画なるものを観ました。想像以上のおもしろさで驚きました。
かわいい娘を結婚させて片付けなければいけないという話なので、とにかく「片付ける」という語がよく出てくる。でも家族全員が、その人がいなくなったらめちゃくちゃ淋しいと思っている。そしていざ縁談(しかも好条件)となった途端にざわざわと意見が割れる。この割れかたがなかなか正直でおもしろい。みんな娘(ヒロイン)が大好き。


娘はものすごく愛されているのも大切にされているのもわかっていながら、居場所を探さなくちゃいけない。つらい。
居場所を決めたら決めたで、「自分ひとりで大きくなったような気になって」と言われたりして、家庭内揶揄の定番フレーズがてんこ盛りなのもこれまたつらい。どこにいても微妙につらい。
当人である娘は爆発的におもしろい女子トークのできる友人とガス抜きをしていて、息抜きもしてる。そうやってなんとか立場をやりくりしてる。義理の姉とも友情レベルで心の関係を結び、自分が追い詰められないようにしている。えらい。
映画のなかのあらゆる対比の見せ方も説明的で、下駄とサンダル、和服と洋服など、親子・兄弟の価値観の変化が示されています。


この時代は女性の話し方に特徴があったのか、顎を使った表現が豊かで、フンって言うときは、フンっという顎の動きをするのだけど、そのフンっの挙動にも三種類くらいあります。
子供たちが素直にクソガキなのもナイス。この子供たちのナマナマしさはすごく新鮮。昔のサザエさんのカツオもこんなふうに描かれていたのかな。
この時代のそれぞれの関係性や、遠慮するしないの基準がとても興味深い映画でした。子供が直接父親にモノをねだらないとか、女性の気持ちは女性が聞き出すとか、上下関係、横の関係、斜めの関係がしっかりある。


主人公がオードリー・ヘップバーンに憧れているという設定で、ファッション映画としても楽しめる。おしゃれ美人女優・原節子がドリフのセットのような世界の中で、ひとりでお茶漬けを食べる(しかも二杯)シーンがあるのだけど、これが沁みるんだからすごい。
多くの人が小津映画にハマる理由が、一本目にしてなんだかわかった気がします。今週末、また観ちゃお。加齢ってときどき楽しいわ。

 

麦秋 [DVD]

麦秋 [DVD]

  • 発売日: 2005/08/27
  • メディア: DVD

一回観ると、この表紙の2枚の写真だけでじわっと涙腺まわりに筋肉痛が起こる。こりゃすごい。いいトラウマを植え付けられた!