うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

秋日和(Late Autumn / 映画)

初めて観るカラーの小津映画。色つきだとこんなにオシャレなのかと、とにかく全部画面キャプチャーしたい!と思うほどのインテリアと衣装の連続。
なかでもわたしは「会社」「学校」「アパート」のシーンに毎回目が釘付けで、母親が勤める桑田服装学院のシーンは、ちょっとまて。どういうことだ、この廊下! この時計! この職員室!!! と 1秒ごとに突っ込みが止まらない、最高にカラフルポップな昭和世界にメロメロになりました。


母娘(原節子司葉子)が住むアパートも、和室でちゃぶ台なのにキッチン道具がカラフルなうえに障子の上に赤いチェックのカーテンを引いている。そこにお人形さんのような女性たちが出入りするのだから大変です。(娘の同僚がこれまたキュート)

この映画では母親役の原節子がモダンな着物にホワイトシルバーのネイルをしているのだけど、そういうことならノリちゃんシリーズもカラーで観たかった!!!と、カラー欲が爆発しました。


登場するヤングたちがハイキングへ行ったり会社の屋上でおしゃべりしたり男女でラーメン屋へ行ったり、場面とふるまいと会話を追っているだけで、それだけでファッション文化雑誌を見続けている気分になれます。

 

さて。
この映画は、いまの人が見ると「セクハラがきつくてしんどい」という感想も多いようです。
登場人物の年配男性たちはゴルフへ行ったりお互いの会社を行き来し、家庭内のシーンでは夫が帰宅後に服を一枚ずつ脱ぎ捨てていくのと妻が拾って歩きます。東京帝大卒で偉くなっているその人たちは女性の価値を美貌と従順さだけで計り、若者に結婚の決断を迫る際にはパワハラもねっとり、楽しそうにやりたい放題。


そんな時代に若者たちがどうやっておじさんを立てながら自尊心を保っていたか。この映画の見どころは、むしろこっちかと思います。女性が会社で働き始めているので同僚間のネットワークがあり、自然に男女が助け合っています。わたしはこの若者たちの助け合いにちょっと胸が熱くなるところがありました。

 


そしてこれは毎度のことですが、いま知ってどうするという知識をまた得ました!

「イモリの黒焼き」というのは惚れ薬をさすそうです。これはいつ、今後どうやって使う機会があるかな…。恋に悩むヤングを前に「おばちゃんがイモリの黒焼きでも手に入れてあげられればよいのだけど…」なんてふうに使えばいいのかな。

思いは自分のなかで言語化しておかないとイザというときに出てこないのでシミュレーションをしてみたのですが、一生使わない気がする。

 


この映画はお出かけ意欲をそそります。自粛してるとちょっとしんどい。

最後のほうで、わたしが昨年に行って大好きになった榛名湖が出てきました。


榛名湖をバックに修学旅行生が写真を撮っていたり、榛名富士が見える甘味処で母娘が茹で小豆を食べるシーンです。
この映画ではところどころ「ハイキング」や「山」が会話の題材になっているのですが、終盤の母のセリフに「山」がかかっているのもすごくいい。

 

 
  今さらもう一度、麓から山へ登るなんてもうこりごり

 


多くの女性が心の中でスタンディング・オベーションをするであろうこのセリフを原節子に言わせるあたり、なんてニクい仕掛け! ずるいよ小津映画。このセリフひとつで、この映画を永久に観られるものにしている。


それにしても、おしゃれなんですよね…。この映画。
衣装の「浦野染織研究所」が気になって調べてみたら、浦野理一さんという当時人気の染織家のかたの作品だよ、ということみたいです。この映画は和装も洋服も、ファッション雑誌の豪華スタイル・ブックのよう。
「あの山はわりかし楽だから」と、スカートでハイキングに行ってます。いいわ!

 

秋日和 ニューデジタルリマスター

秋日和 ニューデジタルリマスター

  • 発売日: 2015/11/18
  • メディア: Prime Video