うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

兄の終い 村井理子 著

警察から連絡が来た時に、一瞬で頭がなにかのスイッチを切ろうとする感じというのは、慣れたりするものだろうか。
内容的には重いノンフィクションなのだけど、しんどくなく読めた。この本を教えてくれた友人の語り口がさらっとしていたからというのもある。

これを読んだほとんどの人が、モノを、特に衣服を減らして暮らそうという気になるだろう。

 


正直に感想を書くと、著者は誰かに一緒に兄を憎んで欲しかったんじゃないかと思う。だけどそれは心のプロの仕事で、いまじゃない。それについて考えるのはいまじゃない。そういう前提でものごとが片付いていくことが、社会が機能しているということなのだろう。
いろんな分野にそれで報酬を得る仕事人がいるということは、これこそありがたい秩序。

 


近所の人から、なんだこんなにまともな親族がいるんじゃないかという安堵の顔を見せられた時に、著者は「過去にこのパターンは何度か経験している。」と、淡々とこなれてしまった絶望を語る。そこに圧倒的な現代らしさを感じた。


「人生」はひとりひとりにある。だからといって、いちいち死んだ後に周囲の期待に応える展開でドラマタイズしていたら回らない。著者のスタンスは未来を見ようとする人の視点だ。そう思いながら読んだ。

 

兄の終い

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