奥さんが東京藝大の学生であるという作家のノンフィクション(取材して書いた本)。
美術学部のほうは友人がいたので想像がつく内容でしたが、音楽学部の生徒の話は驚きの連続。まるでアスリート。
いまヨガをしているせいもあるけれど、「音」に対するスタンスに気になる話がたくさんありました。特に「身体が楽器」である声楽の人の話がおもしろかったのですが、のどのケアについて
- プロポリス、ボイスケア、龍角散の三派に分かれる
- 最終兵器は響声破笛丸(漢方)
という話(168ページ)が、ふつうにノウハウとしてためになる。
ほかにも、オルガン奏者は考古学者のようだという話も興味深く、同じように話す古楽科リコーダー専攻の生徒の以下のコメント前後が興味深かったです。
「当時の楽譜って、活版譜なんです。ハンコみたいに印刷されているから、汚くて……読めないものがあるんです。もう、暗号解読に近いですね。何とか読めたとしても独特の表現があるんです。テンポについて『何秒』ではなく『一脈拍分』のように書かれていたりとか」(220ページ)
なにかを再現したりアウトプットするときに、その成り立ちや構造をあたりまえに気にする人とそうでない人がいるけど、音楽の話はこのように掘り下げる話が出てくる。この話はヨガの教典を読むときのことと少し似ていておもしろい。
美術も音楽も、こういう方向へ進む選択をするというのは多少なりとも「自分で考えて再構築する」という意志があるということかもしれない。
実社会ではこういう意志のほうが役に立つから、「芸大出身=トンデモな人」というのはあまりに型に入れすぎだし、デザイン科の人には学生の時点でビジネスマンの風格がある人がいるのもよくわかる。
いろんな生き方があるのだー! と思いたい気分の人は、読んでみるといいかも。
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