うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

海馬 脳は疲れない 池谷裕二×糸井重里 著(対談)


息抜きの読書という感じで読んだのだけど、対談形式なので人のおしゃべりを聞いている感じで読めました。
たくさんのトピックがある中、「自分に都合のいいように解釈をする脳」「受け手が主導権を握る」「脳には宗教をつくる回路がある」が特におもしろかった。
人は五感の中でも視覚に多く依存することを知ってはいたけれど、だまし絵のようなテストでそれが実感できて楽しかった。以下は、日常の中でも「うんうん、そうだ」と感じたところ。

<209ページ 風邪薬はやる気を奪う? より>
(「やる気」を生み出す脳の場所 "側坐核" の説明の流れで)
糸井:やりはじめる前に、やる気がないのは当然なのですか?
池谷:はい。やってないから、やる気が出なくて当たり前です……この現象はクレペリンという心理学者が発見して「作業興奮」と呼ばれています。作業しているうちに脳が興奮してきて、作業に見合ったモードに変わっていくという。

お赤飯屋さんをしているヨガ仲間が、この三連休は秋祭りで早朝三時に起きてパッケージング作業らしく「あれは、もはや瞑想。ヨガですヨガ。しんどいけど、楽しみ」と言っていたのを思い出した。



226ページ やる気を出すコツはたくさんある より>
池谷:達成感という快楽をいかに味わうかと言うと、「目標は大きく」ではなく、「目標は小刻みに」と心掛けるほうがうまくいくようです。もちろん、大きな目標を持つことは大切なのですが、「今日はここまでやろう」とか「一時間でこれをやろう」と、実行可能な目標を立てると、目標を達成するたびに快楽物質が出て、やる気を維持できます。

これは、ほんとうにそう。ただし人に小さな目標を設定すると、小さな目標をいつまでもつかまえ続けて大きく感じようとする人も出てくるので要注意。これはあくまで、自分に自分で目標設定をする場合の話。



<280ページ テストのたびに公式を導き出す より>
(子供のころに通っていた塾の話からの流れで)
池谷:その頃は経験メモリー(方法記憶)なんていう概念を知らなかったのですが、記憶力が弱くても何かをやった時の方法がわかっていれば、テストには十分に対処できることが実感としてわかりはじめました。
 最小限のことだけを憶えれば、あとは理詰め(方法の組み合わせ)で導き出せばいいから。ぼくは数学の公式もほんとうに憶えないのですが、毎回毎回、試験のたびに公式を導き出していればいいわけなんです。導き出す方法はわかっているんですから。

「導き出す方法を理解する」というのは、なんかわかるなぁ。いっけんむずかしそうなアーサナでも実はむずかしくないことに気づいたり、むずかしいポイントがどこにあるかを分解して導き出したり。身体操法にも、公式を導き出すことってあるんだよなぁ。


ヨガのアーサナの練習をしていると、ドリシュティ(目線)の指定でいっきにコントロールが利かなくなったり、目線ができたとたんに足の指で床を握ってみたり、顎の角度と目線を切り分けてコントロールすることでバランスを保つことができたり。脳と仲良くする方法を探すのはすごく楽しい。
この本は、ヨガをしながらそういうところに面白味を感じている人におすすめです。


海馬―脳は疲れない (新潮文庫)
池谷 裕二 糸井 重里
新潮社