うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

よいこの君主論 架神恭介・辰巳一世 著


小学校のクラス内覇権闘争を観察しながらマキャベリの「君主論」学ぶという本。
クラスのエピソードのあとに、ふくろう先生&たろうくん&はなこちゃんの三者の会話で解説が進みます。
この小学校という設定がなにげにきつい。以下を読むとわかると思うのですが、たしかに書きようによってはこんな側面もあったかも…。なんて

終わりの会における裁判は論理ではなく、押しの強さや、強情さ、声の大きさなどが重視され、とにかく屁理屈でも何でも良いので、他の児童の反論を封殺したものが勝ちとなります。場合によっては、明らかに冤罪であっても謝らされることになりますし、逆に正当な訴えであっても退けられ、酷い場合には申立て人が何故か謝ることにもなりかねません。終わりの会では真実など何の力もないのです。
(209ページ 第18章 軽蔑と憎悪を逃れるにはどうすれば良いか より)

これは感情的な大人ばかりの組織でも同じなので、あながち小学生だからという感じでもないんですよね。



以下の解説部分も、完全にたろうくんが…

ふくろう先生「軽蔑を逃れるには、軽薄で優柔不断で無気力な態度を見せなければ大丈夫。憎悪を逃れるには配下や民衆の財産、婦女子を奪わないこと。そして、憎まれ役を他に押しつけて、権力者を抑制し民衆を保護する。もしくは、大きな勢力の腐敗を正すことができないなら、その腐敗に自分から身を染める。こうすれば、誰からも軽蔑も憎悪も招かずに統治を行えるんだよ」


たろうくん「なるほど! これで僕も今度から胸を張って長いものに巻かれることができそうです」
218ページ 第18章 軽蔑と憎悪を逃れるにはどうすれば良いか より)

サラリーマン!(笑)


一方、はなこちゃんはかなり現実的。

たろうくん「うわあ、マキャベリは厳しいことを言うなぁ。僕は誰に対してもいい顔をしていたいんだけど、それではダメってことですよね」


ふくろう先生「そうだね、たろうくん。確かに美徳と言われる全ての性質を君主が身につけて実行するなら、誰からも誉めそやされるかもしれない。でもね、人間である以上、そんなことは到底無理なんだ。美徳を実行していても、それが原因で破滅することもあるし、逆に悪徳を行っても、そのために己の安全と繁栄を手にすることだってあるんだよ」


はなこちゃん「道徳的に良いことをしていれば自然と良い結果が生まれるなんて、そんなことは絵空事だというわけですね。その考えには全面的に賛成です」


ふくろう先生マキャベリはとにかく政体の維持を最優先に考えているんだ。『政体を守るためにはどうすれば良いか』という逆算から行動すべきということだね。その行動が美徳であるか悪徳であるかはさほどの問題ではないんだ。(以下略)」
(169ページ 第14章 君主が褒められたり貶されたりすることについて より)

政体の維持の話なんですね。


これは長くお店を続けていきたい人が読んでも、参考になることが多そう。まえに【「おもねる」という行為の代償について友人と話した】というのを書いたことがあって、それは常連さんにレベルを下げられてしまう芸人さんの話だったのだけど、そのときのことも思い出しました。
読んでいる最中はめちゃくちゃ性格が悪い感じになるのですが、ここでは美徳か悪徳かは問題ではありません。


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