うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

女の決闘 太宰治 著


ヘルベルト・オイレンベルク(ドイツの小説家)の「女の決闘」という作品を森鴎外が訳したものを、太宰治(自称:DAZAI)がおもしろく解説しつつ、「ちょっと足りないから書き足しますけど」とパロディ化しているかのような作品。
小説を読んでいて「そんな淡白なわけないだろ!」みたいな瞬間てあると思うのですが、DAZAIさんは「ほんとはこのくらい、ドロドロしてたんでしょ」と書き足しちゃう。ドロドロじゃない、ドロッドロに(笑)。

「駆け込み訴え」とはまた違う切り口での、「ややこしくておもしろい」作品です。いまでいうと、ちょっとニコニコ動画の感じと似ているというか、こういう視点の差込のようなことを短編小説でやっているというセンスにおののきます。
このおもしろさは、ちょっと引用じゃ紹介のしようがないのですが、あとで自分で

冗談にもせよ、人の作品を踏台にして、そうして何やら作者の人柄に傷つけるようなスキャンダルまで捏造した罪は、決して軽くはありません。

と書いている。
そしてその直後に「本当は現代の日本作家の作品を題材にやりたいのだけど…」という気持ちも見え隠れする。
「尊敬しているからこそ甘えて失礼もする」というあの作法ってことでよろしくね、というエクスキューズを序盤と終盤に入れてサンドにしつつ、「本当は牛フィレ肉のサンドにしたかったけど、炎上するからハムサンドにしといたー」という風情を匂わせる。
おもしろすぎるわ!


▼ネットで読めます

女の決闘
女の決闘
posted with amazlet at 15.10.15
(2012-09-27)