うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

家族の練習問題―木陰の物語 団士郎 著

近所に住むお友達のユキちゃんが貸してくれました。彼女は「本のソムリエ」のような人で、自分では絶対に買わないような、でも知らずにいるにはもったいないような本を、紙袋に入れて持たせてくれます。実に、センスがいいんだなぁ。そして、うちこのことをよくわかってくれているのだろうな。ありがたいことです。
この本も、そんな出会いの本でした。


著者の団士郎さんは、私等児童相談所知的障害者更生相談所の心理職、職員相談室のカウンセラー、家族療法室のセラピストなどの仕事を経てきた方だそうです。ひとつひとつ、家族の物語とともに進んでいくこの本は、詩のような書かれ方なのだけど、ズシリと心に刺さってきます。挿絵や行間のとりかたの流れも含めての表現なので、引用したところでニュアンスはさっぱり伝えられないのですが、グッサリくる物語ばかり。

いくつか、表現をご紹介します。

<11ページ 道に迷った旅人 より>
なぜそうなったかは、
じっくり自分で
お考えになればいいことです。


自分の生きている意味を
カウンセラーに聞くような愚は
どうぞおひかえ下さい。

「なぜそうなったのか」に答えるのではなく、「これからどうしたらよいか」の相談には乗ることができます、という意思表明のような章なのですが、「あなたの心、あなたの身体に対して、やるのは、あなたです」と言いたくなる場面の回答表現として、シンプルだけど、グッときた。

<26ページ 好きになる力 より>
仕事と遊びを分けるのも、
公と私を分けるのも、
私は信用していない。


生きることに二種類の時間が
あったりはしない。


いつでも自分が生きているのだ。
プロジェクトX」の
主人公たちを
見ていつも思うのは、
仕事だから
それをしただけではない。
そこで生きたのだ。


これを支えているのが
「好きになる力」
ではないかと思う。

沖先生みたい。

<165ページ 迷惑 より>
本当に迷惑な行為は
ただ困ったものである。
しかし、「しょうがないなあ…」といいながら、
どこか表情が和んでいるのは
親愛の情であろう。
こういう関係を持てるかどうかが、
人には結構重要なのではないかと思う。
そのきっかけが
「迷惑」に隠されていることは多い。
ほどほどの迷惑を
お互いが被り合うのが、
暖かい人間関係作りなのかもしれない。

迷惑をかけても、「感謝」を表現できるか、そこが境目かぁ。


とってもあたたかくてするどい、不思議な本でした。

家族の練習問題―木陰の物語
団 士郎
ホンブロック
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