今回の旅行でタイの国内の差を見ていろいろ知りたくなり、1998年のこの本を読んでみました。
面白いです。タイのリゾート地で現地の若者が身近な人の成功を見て感化され、流れに呑まれていく物語。著者が実際に登場人物たちと過ごしながら見てきたことが書かれたドキュメンタリーのような内容です。
堅実な人もそうでない人も、やさしくていい人で、自分本位。欲のスイッチが入って変わっていく経緯がリアルに伝わってきます。
その人たちの背景を説明するときに挟まれるエピソードからタイの風習もわかり、一夫一婦制なのだけど存在する副妻(ミアノイ)の話もありました。
家庭で難題が起きた際にモーピー(呪医)を呼ぶエピソードもあって、タイでは精霊(ピーという)を降臨させる人を呼んで問題を解決してもらおうとする、そういう風習があることをチェンマイにある山岳民族博物館の映像で見ていたので、とても興味深く読みました。
かなり深刻な状況で、一度では納得できずにセカンドオピニオンのように複数のモーピーを呼んでいます。
タイを旅しながら、いま目の前にいるこの人はどういう気持ちを日々の選択の決め手としているのだろうと思う瞬間があって、信心深いのに厳しくなりすぎず、ユルさもある。タイの人々の優先順位やバランスがとても気になっています。
▼装丁のタイポグラフィーが日本語をタイ文字化させたもので、すてきです。