うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

待つ力 春日武彦 著

わたしは自分で自分のことをせっかちだと思っているのですが、あてにならないことを気にしないところもあるので、どっしりしていると言われることもあります。待つことにも分野ごとに慣れがあって、慣れているものは平気になっていく。交通渋滞の多い国ばかり旅行していると、日本の電車の遅延がほとんど気にならなくなるように。

 

「待つ力」というのは自分視点と他人視点では違って見えるものですね。この本を読んで、それは時間軸と自我の縄張りの範囲が個人によって違うからかな…、と考えるようになりました。妄想の範囲が自分でコントロールできる領域を越えている人ほど、待つ力がない。妄想だよねという範囲まで待ち時間に入れてしまっている。日々を振り返って、そんなふうに整理するきっかけになりました。待つことをむずかしく感じるさまざまなパターンが示されているので、エッセイのように親しみながら読み進めるうちに、自分の苦手な「待ち」の傾向が見えてくる。


この本のなかにある、電子書籍がしっくりこないと感じる理由が書かれた部分を読みながら、この話の流れだと感覚的にわかる。文中で引き合いに出されている内田樹さんの説はわたしも読んだ記憶があって、それは「電子書籍だと残りがどのくらいなのか実感としてわかりにくいので、それに慣れない状態の人に電子書籍がいくら読了率を%で示してもピンとこない」ということが書かれていたと記憶しています。

わたしによく本を貸してくれる人はKindleを持っているのに、Kindle版が出ている本でも紙の本も買っていることがあります。文字だけの本なのに「これは紙の本で読みたくて」とおっしゃるので不思議だなと思っていたのですが、この「待つ力」を読んだらわかる気がしました。その人にはわたしとは少し違う、読んでいる感覚や時間を感じる軸があるようです。

 

待てないのは、欲張り。視野狭窄。一つのアイデアへの固執。身近な誰かに指摘してもらえるのがありがたい。ちょっと欲張ってるなぁと思いながら我慢するくらいが楽しいという塩梅は、コンディションや形勢が悪くなるとすぐに忘れてしまいます。こういう本をたまに読むと、心の健康診断を受けたような気持ちになれます。

待つ力 (扶桑社BOOKS新書)

待つ力 (扶桑社BOOKS新書)