うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

病は気から モリエール 作 / 鈴木力衛 訳


モリエールが医者を揶揄する作品を、「いやいやながら医者にされ」に続いて読みました。
この物語はオチもおもしろくて、途中に登場する「マニュアル大好き」の医者の卵のセリフがかなりいい。というか、これはなんだか日本人を揶揄しているようにすら感じる。
モリエールのこの時代は、1619年にイギリスのウィリアム・ハーヴェーによって発見された血液循環説をフランスの医師たちが信じようとしなかったようで、セリフの注釈に情報が添えられていました。
病気をアイデンティティとする主人公・アルガンと、それをとりまく家族と女中がかなりいいテンポで会話を進めます。なかでも主人公(兄)に向けた弟・ベラルドのセリフがいい。

つまり、こうなんですよ、お兄さん、およそ病人と呼ばれる人たちは、あなたよりももっと重態ですし、あなたほど丈夫なからだの持主は、そうざらにあるものじゃありません。あなたは健康で、申し分のない体質に恵まれていらっしゃる。そのなによりの証拠に、あなたはいくら治療を受けても、まだどこも悪くならず、浴びるほど薬をのんでも、ぴんぴんしていらっしゃるじゃありませんか。

ベラルドはこんな調子。モリエールの作る話は、冷静に読むとヘンなのだけど、ごもっともな感じの展開になっていく。


じっと安静にしていればいいんです。自然のままに任せておけば、体調の乱れも、おのずから徐々に回復して行くものです。あせったり、いらいらしたりするから、なにもかもだめになってしまいます。患者の大部分は、病気のために死ぬんじゃなく、薬のために死ぬんです。

ナチュラリスト


いいえ、お兄さん、わたしはなにも医者そのものをやっつけるつもりはありません。人間は、覚悟のうえでなら、だれしも好きなことを勝手に信じたらいいでしょう。わたしはただ二人だけで話し合って、お兄さんの迷いをさましてあげようと思っただけなんです。気晴らしに、こういう問題をよく取りあげるモリエールの芝居でも見せてあげたいものですね。

提案も具体的(笑)。


わたしも今年、まさにこんなことがありました。と思ったら、ほかでもあるんですね。
先日なんだかよくわからない大手術な展開を回避した話をここに書いたら、あとでヨガの練習に来ている人が「わたしも」「わたしも」と似たような話をしてくれました。
そんな人にも、この「病は気から」はおすすめ。オチがちゃんとついてて、笑えます。



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