以前ここで別の本の感想を書いたときに、友人のガッキーが「おすすめよー」と言っていたので、ずっとタイトルを覚えていました。
夜の「徹子の部屋」のような仕立て構成。人生相談の回想録で、夜毎に苦しみを抱えた人びとが訪れ、説法をする。説法の中に、著者さんの価値観や人生観がちらほら語られる。そんな内容の本です。
何箇所か、紹介します。
<45ページ 第二夜 孤独との出逢い 価値観の違う孤独 より>
私は非常に我儘な人間で、わりあい自分がなんでもてきぱきするので、さっと行動を起こしてかたづけるから、昔は愚図な人を見たら腹がたってしかたがなく、「なんでこんなにのろくさするんだろう」とか思ったものです。
7月に行った講演会で見た限り、いまも愚図な人に腹が立っているかのようにお見受けしました。せっかちでパワフルで、かわいらしかったです。歳をとるとせっかちさはチャームポイントになりますね。
<63ページ 第四夜 マイホームの中の孤独 愛は人の性格をよくする より>
ニーチェは「孤独はその人の性格をよくする」と言っていますが、私は「愛はその人の性格をよくする」と先ず言いたいです。
満ち足りた愛は人を謙虚にし、人にも神にも感謝の気持が生れ、自分のあり余る愛で、まわりの、恋人以外の人々に対してもやさしくなるのが普通です。
本当の愛は、人を精神的にし、物質的な欲望を薄めます。
物欲がなくなるのは、「まだまだ、使える物があるし」という愛なんだなぁ。
<89ページ 第五夜 失った愛の中の孤独 孤独に甘えるなかれ より>
食べるものも食べず、泣き悲しんで化粧も忘れ、身なりもかまわず、私は淋しいのよ、孤独なのよと言い続けたって、孤独からぬけだせるわけではありません。そういう態度も甘えの一つだと思います。
本当に孤独でたまらないと思う時こそ、自分と対決し、しっかり自分を見つめましょう。冷たい科学者のような目で鏡の中の自分と対決しましょう。
スワミ発言、出ました。
<92ページ 第五夜 失った愛の孤独 孤独とのつきあい方 より>
孤独でないと出来ない愉しみを思い出して下さい。それは読書です。絶対人に踏み込まれないのが本を読むことです。それから書くことです。書くことも孤独な作業です。
書くことについては、講演会でもすすめられていて、とにかく書いて出すこと、というのが「書いて、出して、浄化しなさい」という教えのように感じられました。書くことから悟る人のことを、ヨーガの分類では「リキタ・ヨギ」というそうです。うちこも、瀬戸内さんは仏の道に入られたのでああいうふうになったというよりは、やはり書き続けていることによる悟りなのではないかと思います。
読むこと、書くことというのは、たしかに一瞬別のことを考えたり、まるで瞑想のさなかのような時間。講演会での著者さんいわく、書くセンスというのは、絵でも文でも早い時期に才能が見えてこなければ、あまり見込みがないとおっしゃっていました。自転車のように、書いていれば乗れてくるというものではないようです。
光文社
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著者と同じ「孤独」観であれば、良書。
心に寂しさを抱えた人に是非^^
月夜の晩