科学ジャーナリストのコラム集っぽい本でした。
読みながら、もともと持っている自分の考えを強化してくれる説に付箋を貼ってしまいます。チェリー畑でチェリー・ピッキングをしている気分。
後半のヨガの効用の確認部分では、著者からの質問にシャラート・ジョイス氏が回答をされています。ロンドン滞在時に著者がインタビューをされたそうです。
数年前に流行っていた筋膜リリースを海外ではファシアということ、この本が発表された頃はイギリスでムーブナットと言われるものやワイルドスイミングが流行っていたことなど、雑誌で知るような情報が多かったです。
わたしが以前書いた「前進欲」の裏付けになるようなこともたくさん書かれていました。
この本は運動をするのが楽しい人が読むと楽しいけれど、そうでない人が読むと「何が言いたいのかわからない」という感想になるだろうなと思っていたら、Amazonのレビューが実際そうなっていました。
わたしは内容自体にほとんど同意で、近頃忘れていたな、と思うことを思い出す機会になりました。
以下の箇所を、もう一度強く意識したいと思いながら読みました。
- わたしたちの骨は、脳と絶えず会話を交わしているのだ。その会話の内容は、わたしたちが重力に逆らいながら骨をどれくらい動かしているかに大きく左右される。<第2章 歩きかたを変えれば発想が変わる より>
- 作業記憶は、およそ5個(プラスマイナス2個)の情報に制限される。それ以上になると、脈絡が失われはじめる。<第2章 歩きかたを変えれば発想が変わる より>
- 呼吸と結びついた心のコントロールが効果を発揮するのは、鼻で呼吸をしているときだけ。<第7章 能力を引き上げる呼吸法 より>
- 休み過ぎない──休息が5~6時間を超えると、退屈とストレスが生まれることが研究で示されている。<第8章 賢く休む より>
文章の書き方というか、ノリというのかな。ちょっとクセがあります。
なんか仰々しくて回りくどいのに途中で急におもしろい喩えが入って、だけどやっぱり回りくどい(笑)。
こういう感じの文章でした。
わたしたちの目が世界に向けて開かれた窓であるなら、わたしたちの肉と骨は、脳に送られた情報をもとに、自分の生存確率を高める行動をとれるようにする乗りものと言える。危険を承知でこの比喩にひねりを加えると、万能の精神による運転に身をゆだねる受け身の乗りものというよりは、むしろ1980年代の懐かしのテレビ番組『ナイトライダー』に登場する、ミッション成功率をひたすら話し続ける人工知能車<K. I. T. T.>のような、おしゃべりな乗りものに近い。そう考えれば、自分専用の乗りものがきしんでいるのか錆びているのか、あるいは道路の次の障害を乗り越えるためにターボを全開にする準備ができているか否かによって、わたしたちの感じかたが大きく影響されるのは当然だろう。
<第3章 心のバネを鍛え、自信を高める動き より>
さすがイギリス。ひねり方がヘン。
人工知能を引き合いに出して進んだ感じを出そうとしたのだろうけど、いまどきナイト2000をひっぱり出してくるこのセンス w
このズレ方、きらいじゃないわ。趣味が合いそう。いますぐ二人でお茶しにいきたい。
なんかいろいろヘンなところもあるのだけど、運動を全力で肯定する本でした。