子供と大人の関係がとても素敵な物語。子供ごころ特有のあの肥大化する罪悪感、親を大切に思って忖度する気持ち、つじつまが合わないまま強引に推し進めたい原動力。いろんな懐かしい感情が湧き上がりました。
読みながら、まさかこんな展開になりはしないだろうかと思う方向に自分のヨゴれた猜疑心を確認したり、夢の中でいたずらを笑い飛ばしてくれる近所のおばさんに圧倒的に癒やされたりして、大人になってもなくならない幼稚な思考を揉みほぐされました。
日本語訳がときどき江戸っ子なのも痛快で、ベルリンの話なのに会話も粋に聞こえてくる。
人と人とが分断されていく世相のなかでこういう物語に触れると、心がふっくらします。
- 作者:エーリヒ・ケストナー
- 発売日: 2000/06/16
- メディア: 単行本