うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

犬のかたちをしているもの 高瀬隼子 著

作為的に考えれば考えるほど、根源的な幸福からは遠ざかる。だから過剰なプランは立てないことだ。── と、そういう感覚をなんとなく行動指針のようにしている。

その指針は、30代前半までのうじゃうじゃを振り返った経験からの学び。

 

わたしは主人公と同じ境遇になったらあっさり別れを選ぶと思ったので、わりと終盤までミステリーのような感覚で読みました。そんなにまでして執着する要素がどこに? と不思議でしょうがなくて。

 

そんな謎解きを追いかける気持ちで読んでいたのだけど、わたしのなかにあった謎が、ここで解けました。

 明日からどうしようかな、何を見て、何を聞いて、どうやって生きていこうかな。何をよすがに、何のために、何を言い聞かせていれば、まるで自分のために生きているみたいに、息ができるんだろう。

ここで宗教の勧誘がきたら、スッと入ってしまいそうな主人公。これな!

人に依存するよりも神に依存するほうが、まるで自分のために生きているみたいに息ができると思うことってあるから。そういうものじゃないか。わたしがこの状況だったらイチコロだ。ちょろいもんだ。

 

 

なんか最近文学賞を受賞する作家が提示してくるものはどれもすごい。

すごいすごいと感心しつつ、作為的に考えれば考えるほど根源的な幸福からは遠ざかるから、読みすぎないように注意しなければならない。こういうのはたまに読むくらいにしておかなくちゃ。

「犬」は愛の対象として登場していたけれど、終盤では中勘助が書いた「犬」のように感じられて、"犬のなかみをしているもの" もチラつく。うまいなと思った。