うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

次の時代を、先に生きる。 まだ成長しなければ、ダメだと思っている君へ 高坂勝 著


わたしの周辺に、地方でたくましい暮らしを始めた人が何人かいることを書いたことがありますが、この本を読みながらその人たちのことを思い出しました。そのうちのひとりはクラウド・ファンディングによるギフトエコノミーの実践にかかわり始めていて、わたしも寄付をすることで活動報告を読ませてもらっています。


この本の中で書かれている考えかたを読んでいると、数字の面で考え方が自分と似ていて驚きました。わたしは自宅に来た友人から「この生活でミニマリストじゃなければ、ミニマリストってどれだけハードルが高いんだ」と言われたことがあります。わたしはミニマリストに見えるらしいのです。テレビ、電子レンジ、掃除機、エアコンがなかったり食器や調理器具や衣類が少ないために空間が多く、視覚的にミニマリスト風情が出ているようです。
わたしはいつも同じような服を着て家で同じようなものを食べていますが、外出・外食・習い事・エンタメ消費をよくするのでお金は減ります。家電はポリシーがあって減らしたわけではなく、壊れたものを捨てるときにシールを買って予約して…という手数を思い出し、買うのを先延ばしにしながら日々が過ぎただけの消極的・なりゆきミニマリスト
とはいえ、ここ数年で削ってきた生活所作の要素は、この本のなかにある考え方ととてもよく似ているのです。驚きました。


わたしの場合は生活を変えたというよりも、経験と年齢と疲労度に合わせてチューニングを続けた結果。
便利さよりも、なにか即決を迫られたり忠誠心のようなものを試されることで自分の感情の幅を削り取られることのほうが重く感じるようになりました。携帯電話、インターネット、スマートフォン… いずれの進化のときも、もともと忘れっぽいので即レスする癖があり、どんどんスピードがあがってしまう。30代前半で、自分の心がそのうちITに潰されたりして…と、想像しはじめていました。40歳まではがんばるつもりが、そのまえに下山を始めました。


わたしのようにこのような感覚や疲労度が深刻でないならば、大河を渡る大きな船に乗っている方が精神も安定し、かしこいと思います。この国の風潮からして、そのほうがたぶん得ではあるし周囲も安心します。周囲の安心が重要であるならば(あなた自身も誰かにとっての環境要素)、トータルで相乗メリットが大きいように思います。わたしの選択を船に喩えて考えている話は以前書きました


この本を読んで、とてもすばらしい思想だと思いました。ただそこにぐっと強く惹かれるときに、自分がこれまでに満たしてこなかったものの性質について棚卸をしておかないと、あとで揺り戻しがきそうだな…、とも想像しました。
食欲・睡眠欲・性欲だけでなく、金欲も名誉欲も知識欲も、現代社会生活を送るうえではプリミティブな欲求。環境や思想をガラリと変えても、ちゃっかり発芽を繰り返す。そういう本性も見極めながら、ゆっくり自分で自分を手なずけていく。そのほうが堅実と思います。その手順を踏んでおかないと、周囲からは陰謀論に振り回されている人に見えてしまいそう。わたしはどうにもそうなることがいやで、それを避けたい。これはわたしの名誉欲。
この本を読みながら、ここ数年のいろいろなことを思い出しました。ガンディーのヒンドゥ・スワラージの説き方と比較して読んでみると、日本人がどういうところで心を満たされるかのヒントを見るようでもあり、とても興味深かったです。


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