うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

なにかが降る町で暮らすことと、そこでのあたりまえ(宮崎県小林市)


鹿児島県寄りの宮崎県と熊本県へ行ってきました。鹿児島空港から入りました。長崎県より南の日本へ行くのは10年以上ぶりで、宮崎県・熊本県へははじめて行きました。
拠点にした場所は新燃岳の灰が飛んでくる地域で、噴火が始まった翌日に到着しました。東京に戻った日の翌日にはさらに噴火が激しくなり、鹿児島空港からの飛行機が欠航。たまたまちょっとおさまっている数日間に行くことができました。その後しばらくは大噴火にならぬよう祈るような気持ちになる瞬間が幾度もありました。
自然を前にして途方もない思いが日常化していくことは日本の各地であるのだろうけど、まるで雪のように灰が降っている町へ行き、こんな日常もあるのかと驚きました。東京の途方もない満員電車は、地方から来てみたらすさまじい。そういうすさまじさが、はじめての降灰体験にありました。
わたしは火山の噴火を近くで見るのが初めてです。木彫りの龍のような迫力のモリモリした煙はまるで意志を持って生きているかのようで、昔の人はこれを怒った龍だと思ったのでは…などと想像し、目には見えないけれど時間を置くと確実に積もっている灰の「見えなさ」をとても不思議に感じました。こんなに灰のことを考えたのははじめてです。そしてその地域の特徴はこのようなものでした。


  • どの家も車庫の前にホースがある

いきなり車のワイパーを動かす窓が傷むので、まずは水で流すのだそうです。洗車というものがどうにも不毛に感じるくらい、雪国の毎朝の雪かきのような感じで、朝の車に灰がうっすら積もっていました。降ってくる粒には小さな石ころみたいなのもたまにあって、窓ガラスを傷つけてしまうこともあるそうです。


  • 道路が滑る。土の上はふわっとしている

この地域では噴火でマラソン大会が中止になったのですが、それは吸い込む空気の懸念だけでなく、灰で道路が滑るとのこと。歩いていて、なるほどな…。と思いました。雨が降ったら滑るし、乾燥したら灰が舞う。土の上に灰が積もっている箇所は、ツンツンすると、落雁のようにぽろぽろ崩れ落ちます。


  • 外でほんのり硫黄のにおいを感じる。温泉がいっぱい

お店から出たとき、車から出たとき、いろんな瞬間に硫黄と灰を感じます。そしてかなりよい(パワフルな)温泉があちこちにありました。温泉は3か所入ってみたのですが、うち2つはかなりビンビンくるお風呂でした。エネルギーが恩恵になったり畏怖の対象になったり。火のエネルギーを感じます。


  • コインランドリーの数がすごく多い

まるでゲストハウスやカフェのようなおしゃれなコインランドリーもあったりして、とにかくコインランドリーをよく目にします。コインランドリーは東京でも増えているけれど、ここでは洗濯物を外に干せないときの需要もある。



雪のように季節に向けて準備を進められるわけでもなく、噴火したときに対応する。雪のようには固形化しない。それ用のさまざまな知恵が求められる。土地ごとの「あたりまえ」を見ると、この国の自然の豊かさと複雑さにおどろきます。



これは、雨よけに積もった灰。磁石に集まる砂鉄のよう。





地面に積もった灰。




もちろん地方ならではの不思議な味わい物件も、いっぱい。


小林インターチェンジ・バス停近くの、だんだん低くなっていく謎の建物。
ウルトラ警備隊の寮みたいなデザイン。そしてこの近くの道路にあったのが「みやまどり苑」。
ほんの一ヶ月前のことなのだけど、異世界に行ったかのような記憶になっています。