うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

壇蜜日記2 壇蜜 著


壇蜜さんは魚と猫を飼っているのだけど、魚の生態描写がまるで人間のようにされていてドキッとする。
容赦なく餌に群がりガツガツした魚と、屈託なく寄ってきてくれる猫。こういう態度を随時参照できる環境で暮らしていれば、人間のおそろしさ浅ましさをズバリな感じで目にしても、やり過ごせるのだろうか。あんまりやり過ごせているようにみえない日記がたまにある。
この人はたいへんなことを言われながら仕事をしているのだよな、と思うと「壇蜜さんに比べたら、この程度の侮辱など…」と気を持ち直す一般人の女性も多いであろうと思う。
そしてまぁどうにも志が高い。

ある状況を見て「せめてもの嫉妬対策」(9/9の日記)と感じたり、「このタダの向こうで誰かが損や得をしていることくらい分かる年頃だ。タダは怖くないよと謳うことの恐ろしさを感じられるだけ猜疑心の強い大人になれて良かったと思う。」(10/30の日記)のようにあたりまえにネガティブで居られる自身を褒めるところは褒めていたり、「夜、賞味期限の切れたベーグルで久しぶりの運試し」(11/29の日記)をしたり。他人も自分も恨まずになんとか日々をやり過ごしていくためのノウハウがいっぱい。
2015年1月19日の日記では、世間を騒がしている未成年の事件を思い自分はその犯人を「痛いかまってちゃん」と言い放てないと感じ、それを職にしている自身を振り返り、善悪をつけることの怖さをどこまでも熟知されている。


以下のようなまじめさと開き直りのバランスが、「ああ、ここにも、こんな人が居て頑張ってる」という気分にさせてくれる。

回数を経る度に自問自答する。こんなことをしていて高い対価を払っている人に失礼ではないのか……と。その考えが失礼だと言われそうだが。
(2/7の日記)


過去の切り売りをしていてはそれは話芸ではない。切り売りは下品……らしい。真面目な話をすればつまらない。経験を交えたら下品、国民として考えを述べれば股開いてる奴が勘違いするな……。色々言われるが給料がもらえるので、いいや。
(4/23の日記)

そうそう、それでいいんだよ。なんて、ちょっとおねえさん目線で言いたくなる。
壇蜜さんくらいの年齢は、いちばん男性から嫉妬をぶつけられやすいと思う。「色々言われるが給料がもらえるので、いいや。」で、いいのだと思うのです。


壇蜜さんの日記を男性が読んで「地味さに好感」などと感想を述べていると、壇蜜さんの思い通りではないかと思う。壇蜜日記には、30代後半以降の女性が読むと「わかる。わかるよ。がんばって。その年齢の頃って、そうなの。いじめられるの」という気持ちになることが書かれている。
わたしは壇蜜さんくらいの年齢のときに、「ヨガインストラクター=奉仕的」「いつも同じ時間にそこにいる=その仕事しかしていない」というように、見える範囲だけで人を値踏みする男性から「いつもここにいて、大丈夫なのか? うまいもんでも食いにいくか!」と爽やかにお兄さん的なノリで言われたことがあります。そのとき「女性が淡々とさまざまな顔を持って稼いで暮しているという実態は、どうやら隠すべきことのようだ」と思いながら観察していたのだけど、「壇蜜日記」を読んでいるとその頃の感覚がよみがえってくる。
壇蜜さんは蔑視されやすい側にいるからこそ見える景色を、やさぐれずに楽しもうとすることをやめないところがすてきです。


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