うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

広告ガール(アドガール) はあちゅう 著


まえに紹介した「半径5メートルの野望」の著者さんのエッセイ。

新卒で広告代理店に入社したときの話や家族の話が書かれているのですが、おもしろいOLさんのブログを読むような感じで、電車の中でニヤニヤしながら楽しく読みました。
先日港区を歩いていたら以前の仕事仲間にバッタリ会ってフリーズしてしまったのですが、この本を読んで「またあのノリで急に話しかけられても放心しなくていいように」と、リハビリ気分で読みました。

内容は2008年〜2010年ごろの話。おもに広告代理店に入社した頃のはあちゅうさんの思い出が語られています。おもしろい。
わたしは以前、代理店の人と一緒にクライアントさんの所に行って広告を表示する方法を説明するような、そういうことをしていたことがあります。「中の人を連れてきました」といって連れて行かれる地味な人、というポジションで。インターネットの仕組みの職場では比較的明るいキャラクターとして扱われるわたしですが、広告代理店の営業さんの中に入ると「ちびまる子ちゃんに出てくる野口さん」のような存在になります。ほんとうにそのくらい、あの世界の人たちのグイグイ感はすごい。


この本にも出てきますが、クライアントさんへの気遣いとタブーの多さは、ほんとうにたいへん。というのが、このエッセイを読むとよくわかる。わたしも実際、ものすごく不機嫌そうに怒られた場面に出くわしたことがあります。営業さんはチャラチャラしているように見えるけど、細かいところをこっそり確認して手直ししていたりする。ちょっとしたイベントの段取りや仕切りのよさも感動もので、「前向きな雰囲気」「たのしい体裁」をつくるのが抜群にうまいし、丁寧。


一方で、やっぱり異様というか、なにかそういう状態を続けられる素養がないと第一線には居続けられない世界とも思います。わたしは当時それを「秀吉成分」と呼んでいました。草履を温め、豪華絢爛を誇る。そういうことを適度にエンジンをかけながら明朗にやれるって、リアルで見ると本当にすごい。(組織内のホモソーシャルでちちくりあうのとは別の、クライアントに対する秀吉っぷりのことです)
この本のはあちゅうさんのコメントの中にも、「そこまでやるのか」という反応が随所にあり、でも秀吉さんってすごいわという視点でもあり、この偏らなさが彼女の魅力だなと思います。おだやかなバランス感覚を持っている。


代理店の話のほかにも、ライフワーク的にエロコンテンツに携わったキャリアが思いのほか長いことや、その上をいっている妹さんの話もおもしろかった。過去の自分の日記を要約する文章が爆笑モノで、日常的なコピーワークのじょうずな人。
「演じてる」感じでがんばっているメディア系事業のOLさんや、そういうことを遠い目で振り返る人(わたしのような)は、共感するところが多くて元気が出るエッセイです。

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