うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

バーのマスターはなぜネクタイをしているのか? 僕が渋谷でワインバーを続けられた理由 林伸次 著


cakesでエッセイを執筆されている、渋谷のバーの店主さんの本。
ワイングラスのむこう側」というシリーズの中にあった「お店の本音」のなかにある出来事がとてもうなずく内容ばかりで、本を読みたくなりました。
場所や時間の限られているサービスを運営する人に共通する悩み事は、それぞれが口にせず自分なりのルールを敷いてやっているものですが、いざ自分が利用者側になるとやってしまうことって、たくさんある。そういうことにハッとするためにも、さまざまな業種のこういう本を読むと、学びの材料が多いです。
この本には「こんなことまで書いてくれちゃうの?!」ということが書かれていて、すぐに定員になってしまう貴重なセミナーに参加したような読後感があります。カフェブームと重なる時代に渋谷でバーをやるという状況から、若年層に対して「あなたは歓迎するお客さんではありませんよ」ということを示していかなければならなかったり、必要な割り切りや決断の事例がたくさん書かれています。


ここは、すごくうなずいた。

<149ページ 「距離感が大事」より>
「お客様に対して悪い印象をもつなんてサービスマンとして間違えている」
 なんてことを思う方は、もしかして、サービス業に向いていないかもしれません。

この前後の経緯が読みどころなのですが、お店が終わった後にお客様と別のお店に飲みにいったりするスタイルの人は本当に飲食業に向いている人なのだろうけど、成功する人は百人に一人しかいないような気がする、と書かれています。
こういうあたりまえのことを、書いてくれている。




以下も似た主旨でうなずいたのですが

<204ページ 「長くお店を続けるために」より>
 バーテンダーは、それが仕事なのになぜか酒に飲まれてダメになってしまいます。お客さまから、
「どう?マスターも一杯」
 というスタイルのお店ってありますよね。あれでそれなりの売り上げを期待する気持ちはわかりますが、その金額ってたかが一日、数千円くらいです。お客さま側は「おごってやった」という気持ちになるので、「クールな関係」は保てないし、さらにはっきり言ってしまってお酒を飲みながらいい接客ができるとは思えません。

すごくよくわかる。




広告に対する感覚も、すごく冷静。

<63ページ 「広告費、ほぼゼロ」より>
個人的な感想として「ネット広告にお金を出すのはドブにお金を捨てるのと同じ」と思っております。もちろん、大きい資本のお店で週末や年末に数十人単位の宴会を入れるようなお店は別ですよ。そういう需要があるお店はさまざまなネット広告を駆使して、幹事をやっているサラリーマンのPCに伝わりやすいように、いろんなプランをネット上で公開した方がいいとは思います。
 でも、bar bossa は小さな個人店です。周りの人間に、
「ネット広告ってどう思う?」
 と聞いても、
「自分だけが知っているお店だと思っていたのにネットで安くなるクーポンがあったりすると二度と行きたくなくなる」
 とよく耳にします。

これほんと、そうなんですよね。わたしはヨガを習いに行くとき、早期割引があったり午前・午後も通しで参加すると安くなるワークショップは、なんとなくがっかりする。似たような理由です。



自分で考えて実践してチューニングし続けるって、すごく大切なこと。
一度やって、やっぱりやめました。ということも、言語化できてからがノウハウなんですよね。
アドバイスをくれる人もいるのですが、ヨガに「修練」として向き合っている人はあまりそういうことをしてこないので、アドバイスってなんだろうなぁ…と思う。いまはかなりのことがこういう本で教えてもらえる。ありがたいと感じます。