うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

はじめてのインド哲学 立川武蔵 著

最近この分野の本をよく読むのですが、日本の研究者の本はやはり面白いです。
特にブッダ空海との結びつきを書いてくれているものは、興味を絶やさず読み進めることができます。サーンキャ哲学を下敷きにヨーガ哲学がある、というのはこれまで読んだ本を通してわかってはいたものの、その周辺にあるインド哲学との前後関係がいまいち頭に入っていなかったので、この本はとても理解を深めるのによい内容でした。写真は、なかでも一番興味深く読んだ7章の目次です。


今回は「インド哲学」「ヨーガ」「仏教」「ブッダ」「空海」に結びついた興味深い内容がたくさんあったので、3つピックアップして引用紹介します。

<76ページ 「インド六派哲学」より>
いわゆる「第三期」の中葉、つまり、紀元後一世紀ごろからは、バラモン哲学者たちの間で哲学諸学派形成の動きが盛んとなり、紀元後400年ごろまでにはバラモン正統派の諸哲学学派の体系が整備された。いわゆる「インド六派哲学」の成立である。(中略)その六派とは、
1.サーンキャ 2.ヨーガ 3.ヴェーダーンタ 4.ミーマーンサー 5.ニヤーヤー 6.ヴァイシェーシカ
の六派である。

よく聞く哲学のこれらは、こうゆう前後関係なのね。

<171ページ 「四種のタントラ経典」より>
ヨーガ・タントラの代表は、『金剛頂経』(七世紀末ごろ)である。悟りを得ることを究極の目的とすることは『大日経』と同じであるが、密教的ヨーガの行法がさらにいっそう重視される。行タントラとヨーガ・タントラの主要な相違の一つは、両タントラの主尊である大日如来をどのように考えるかにある。
(中略)
ともあれ、『大日経』と『金剛頂経』は、仏教タントリズムの主要な経典の二代表であり、九世紀のはじめ空海は、中国にわたってこの二経典およびそれぞれのマンダラ図(前者にもとづいた胎蔵〔界〕マンダラと後者にもとづいた金剛界マンダラ)を中国より将来したのである。

ヨーガと仏教の結びつきについて、日本人として知っておくとよいですね。

<190ページ 「眼前に仏を立ちのぼらせる」より>
ヨーガの歴史は、前半期と後半期に二分できる。(中略)仏教の開祖ブッダは、古代におけるすぐれたヨーガ行者であった。古代のヨーガ行者たちは、心作用を統御・止滅させる手段としてのヨーガを重んじ、いわゆる超能力は少なくとも主たる目的ではなかった。ヨーガの伝統はインドにおいて間断なく続いたが、タントリズム興隆期にヨーガもまた明らかな変化を経験し、ヨーガの歴史は後半に入った。その変化は、ニヴィリッティ・マールガからプラヴリッティ・マールガへの変質と呼びうるものであった。
紀元六、七世紀までのヨーガを「古典ヨーガ」と呼び、それ以降、主導的になるヨーガを「タントラ・ヨーガ」と呼ぶことができよう。今日、日本や欧米で広く実践されているハタ・ヨーガは、11〜12世紀以降に確立されたものであり、タントラ・ヨーガの一種である。
古典ヨーガは、実践者の心の作用を統御し、さらにそれを止滅させようとする。一方、タントラ的ヨーガは心の作用を止滅させたり、鎮めたりするという方向にではなくて、活性化、増強するという方向に働かせる。古典ヨーガでは、心作用は否定されるべき「俗なるもの」であり、それが寂滅へと導かれた結果、「聖なるもの」としての智恵あるいは神が顕現する。

確かに。ハタ・ヨーガはエネルギッシュになる、というのは経験上よく感じます。ただ、長い目で見ていくと、「あわてない人」化していく感覚があり、そうゆう点では「心の作用を鎮める効果」が、単純に結果としてある効用だと感じています。環境の変化があまり気にならなくなるというか、「なるようにしかならないものに、つべこべ言ってもしょうがない、はい、やりましょう」という感覚。うちこの師匠が言うところの、「やるか死ぬかネ!」ってやつです。


やっぱり、古くから伝わるものに触れる生活というのはよいものです。
身をもって体感しながら学ぶというのは、なんだか大人っぽい楽しみな気がして。

職場に「南京玉簾」を行じている先輩がいるのですが(年末に「忘年会でアタシ簾やるから歌やってよ」と頼まれて困っている同僚を目撃・・・)、別にヨーガじゃなくても、こうゆう感覚で余暇を楽しむ人が増えれば、エコロジー偽造なんて発想のない日本になっていけるかも、と思います。
ちなみに、キレイなOLファッションで、エルメスのバッグと一緒に「簾の筒」持ち歩いている先輩は最高にファンキーであります。ヨガマットよりカッコイイよそれ! と、密かに応援しています。

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