うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

「自己愛」と「依存」の精神分析―コフート心理学入門

最近わりと心理学の本を読みます。解剖学のようにヨガとの結びつきから読んでいるというのではなく、仕事で発生するいろんな人との接触から。「どうしてこの人はここがこんなに気になっちゃうんだろう?」ということがよくあるのですが、接する人が増えるほど、頻度も増える。
今までだったら、「ありえん!」と一蹴してしまっていたところなのですが、そうすると、またさらにいろいろね。。。「なぜ職場で知り合っただけの関係の人に、ここまで個人的な不安を訴えることができるのか」ということに「興味」を持って向かい合ったほうが毎日に意義が見いだせるのではないか? という方向に切り替えることにしたんです。

この本は、いつものように自由が丘でヨガをした帰りにブックオフで買ってきたのですが、今までフロイトとか心理学とかをしっかり学んでこなかった私にもわかるような、よく噛み砕かれた内容です。コフートという人は、フロイトの娘であるアンナ・フロイトと深く交流のあった精神分析学者で、フロイトが「自己愛」を病に結びつける否定的な取り組みであったのに対し、「自己愛」そのものは肯定し、それが満たされないことによって生じる問題にスポットをあてる考え方をした人です。(これは、この本を読んでの「うちこ要約」)
この本自体が、フロイト流とコフート流の違いについて多く述べているので、おのずとフロイトの考えも学ぶことができます。という点で、入門書としてはお得な内容だと思います。

ひとつだけ、内容を引用して紹介します。長いですが、日本人の著者が噛み砕いてくれていることにすごく価値があり、面白く読んだ部分です。

<150ページ 「甘え」にも共通する自己対象理論 より>
対人恐怖症は、少なくとも韓国にもあることは確かなのですが、アメリカの精神障害の診断基準であるDSM―4では、日本の文化に固有の病気だとされています。その理由は、相手の気持ちが読めないのが悪いという考えの文化だからとされています。いずれにしても、この自己対象という概念、つまり相手がこちらの期待通りに動いてくれるとか、こちらの甘えを満たしてくれるという心理は、むしろアメリカの文化ではなかなかしっくりこないのかもしれません。でも、それを本当にやったらアメリカ人だって喜ぶはずです。
たとえば、真夏にアメリカ人が「暑い、暑い」と言って家の中に入ってきたとして、その人が「お水をください」という前に「暑いから冷たいものでもどうですか」と言われたら、やはりうれしがると思います。「ほしいなどと言っていないのにおせっかいをやくな」というようなことになったとしたら、それはその人がのどが渇いていないときに生じることで、ある種の共感のミスです。ほんとうにのどが渇いていたら、何も言わないのにわかってもらえたという感覚をもつので、いくらアメリカ人でもうれしいはずです。つまり、ことばに出さなくても向こうが満たしてくれる関係性というのは非常にうれしいものだし、ほんとうは多かれ少なかれ人間はそうゆう経験をしているし、それを望んでいるのだというのがコフートの基本的な考え方なのです。

これを読むと、有名なフロイトよりもコフートという人に、日本人なら親近感を抱いてしまうと思います。対人恐怖症が日本に固有のものと扱われているということはちょっと意外です。


以前、リチャードというお友だちが日本に来たとき、「日本人はおおむね親切だと思うけど、明らかにすぐ後ろに人がいるのにドアを(開けたまま)キープしないのが怖い」と言っていて、「確かに!」と思ったことがあります。
これは、「知らない人に親切にしても、感謝されないし」的な、非常に反ヨギ的な側面だと思います。逆に、「知っているもの同士なんだから空気読めよ」というのを「マナー」とするような面もあります。「みんなに親切にしとけばいいじゃん? カン違いされない程度にさ」というのがいちばん健康的でよいと思うのですが。
インドにホームステイしたときには、「まったくこちらの状況を考えずにもてなしまくる」というスーパー自己満足的なおもてなしに面食らいましたが、感動もしました。

「親切」の考え方についての国民性というのは、旅行をするたびに感じる面白みでもあります。もっと狭い範囲で考えると、「ネット上のマナー」についても、いつもいろいろなことを思います。人それぞれのデジタル・リテラシーや想像する性悪説の範囲にもよるのですが、これはこれで奥が深い、面白い研究材料だと思います。

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