うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

粋な人、無粋な人 伊藤由美 著


わたしは銀座の本屋へよく行くのですが、この本は銀座の本屋で長期間プッシュされていて、地元で人望のある人なのかしら…、と気になって読みました。こういう職種の人がこういう本を出しているという事態そのものに興味もわくし、やはりリアルタイムで活動されている人の言葉は興味深いもの。
23歳でクラブを立ち上げて30年以上続けてきていて、バブルもSNS時代も経験した人が語る「粋」は、いまどきのことも混ざっていておもしろい。
へえぇ、こんな用語があるんだ。という発見もありました。

  • 『栄光浴』という言葉があります。「欲」ではなく「浴」。社会的に評価の高い他者とのつながりを強調することで自分の印章や評価を高めようとすること、だそうです。(P30)
  • よく権力のある人に対して従順な人、媚びへつらう人のことを「ポチ」「ポチ体質」などと言います。(P38)

前者は「浴」ってのがおもしろい。後者のポチはハチ公よりもライトな感じと言うことだろうか。



バシッという定義もおもしろい。

  • 誰も頼んでいないのに自分から延々と話すのが「自慢話」、相手に聞かれてそれに答えるために話されるのが「自己アピール」です。(P65)
  • 度を超えたお節介は、自分の価値観の押し付けでしかありません。(P85)
  • 自分の話を延々として許されるのは、小さな子どもと、自分に興味をもってくれている男性を前にした女性だけです。(P131)
  • 説教とは「教えを説く」こと。自分が相手より優位なことを確認するためのものでもなければ、価値観を押しつけるものでもないのです。(P139)

この本を読むと、カウンセリング的なビジネスの領域との住み分けがうっすらと見えておもしろい。



以下は、なんか大変そうだなぁ。と思ったところ。

私もコンサートやイベントのチケットの手配や人の紹介など、お客様からの頼まれごとが少なくありません。(P135)

わたしなんてもっとライトな頼みごとでも、わりと簡単にションボリしてしまうのに…。すごいの。
そして

努力は人に見せるものではない。苦労は人に語って聞かせるものではない。(P137)

とあり、このかた、この本の中でまったく苦労話をしていない。文体というかスタイルができあがっていて、傍若無人なお客さんのエピソードも「銀座のクラブといえどもこういうお客様もいらっしゃいます」くらいでさらっと進んでいく。
中年になると誰も指摘してくれないことが書いてあって、しかも場数をこなしてきた人の言葉はおもしろい。常に時代にあわせてチューニングしながらやっていくって大切なんだな、というのをしみじみ感じました。


▼紙の本


Kindle

粋な人、無粋な人
粋な人、無粋な人
posted with amazlet at 16.06.16
ぱる出版 (2015-06-15)