なださんの本は、「不思議な名前の人で、おもしろいタイトルの本が並んでいるなぁ」と思って一冊買ってみたのが出会い。精神科医のかたの本の中では格段に「作家さん」ぽい。「医師が書く専門的なもの」を期待する人には文芸度が高い印象になるのではないかな。
これは妄想ですけれども、自分が精神科へ駆け込んだとしましょう。
そこで、お医者さんに「あー、だめ。今日は俺がだめな感じだから、診療できない」と言われたら、どうですか?
わたしは「信用できるわこの人」と思うかもしれません。なださんは、そういうことをしてくれそうなお医者さん。
わたしは「仕事以外の約束がすこし苦手」です。友達にはそりゃ会いたいから約束をしているわけで、わくわくもしている反面、どこか、日々の自分クオリティに自信がない。
なので「一緒に寺へ行こうか」とか「ヨガへ行こう」とか、ほかのことに半分肩代わりしてもらう。仕事となると、そういう素直な動物性は封印して「仕事ですから」ということで自分をマシーン化する。
こういうとき、もっと心のことをわかっていたらバランスのいい快楽主義者になれそうな気がするのだけど、そこはまだまだ未熟な感じというか、熟すことすらほどよくできない。
なださんの本を読んでいると、自分が少し動物に戻れるような、そんなやさしさを感じます。専門家でありながら「答えがねぇんだよなぁ。でもダラダラ話すことは、それなりに意味がないわけでもないから話すよ」というスタンスがいい。
「専門家としての専門性」よりも「言葉の連なりとしての心地よさ」のほうが前面に出ているところに、「信用できる」という感覚を持つ。わたしが好きな作家さんの傾向は、こういうところかもしれないな。
▼過去ログリンク(読んだ日付順・上のほうが最近です)
●信じることと、疑うことと
●娘の学校
●権威と権力 ― いうことをきかせる原理・きく原理
●不眠症諸君!
●〈こころ〉の定点観測
●くるいきちがい考
●人間、この非人間的なもの