うちこのヨガ日記

ヨガの練習や読書、旅、生活、心のなかのこと。

あの空の下で 吉田修一 著

ANAの機内誌「翼の王国」の連載小説にエッセイを加えて刊行されたもの。
子供のころ、父親が出張の帰りに持ってきたと思われるこの雑誌を読んで、すごくきれいな写真がいっぱいだったことと、通販ページのその特異な品揃えに少しワクワクしたことを覚えている。


この著者さんの「パークライフ」という本を読んだことがあるのだけど、内容は忘れてしまった。ブラーのアルバムと同じタイトルだったのでなんとなく手にとった、という理由だけ記憶している。
「あまり印象に残らない」という読後感は変わりなかったのだけど、わたしも少し大人になったのか、本のはたらきについて思いを深めてみた。


ここにある小説は、空の上で読むために書かれている。
身体が浮いてる状態では、少し毒抜きされたくらいのものでないと、バランスが悪い。


ここにある小説には、「旅のモチベーションをあげる」という役割がある。そこんとこは、200点満点なんじゃないかな。
たとえば、こんな描写が「ひとり旅の、あの感じ」を思い出させる。

<「恋恋風塵」より>
 たった今まで彼女が座っていた場所が、なぜかとても神聖な場所に見えてくる。思い切って腰を下ろすと、ガラス窓は高く、外の景色は見えない。
 尻に伝わる振動と、車窓を流れていた田園風景の残像だけになり、今、外国に一人でいるんだなぁ、とふと思う。


この本は仕事への行き帰りのバスのなかで読んだからか、「東京画」という作品だけが、妙にじんわり沁みた。
やっぱり読み手の状況や環境って、感想の大きな要素になるね。



女性が主人公のものも半分くらいあるのだけど、どの女性にも共感できる感じがしなかった。
男性の場合はひとり旅、女性はそうない旅の話ばかりだったからかな。

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